労務費(賃金の消費・賃率差異)
賃金の支払と消費を分けて記録し、直接労務費と間接労務費に振り分け、予定賃率による賃率差異を処理できるようになります。
ねらい
工場で働く人にかかる原価の記録を学びます。このレッスンを終えると、賃金の消費を直接労務費と間接労務費に振り分け、予定賃率を使ったときに生じる賃率差異を処理できるようになります。
ストーリー
あなたの会社の工場では、製品を組み立てる作業員が働いています。作業員に支払う賃金は労務費です。材料費と同じように、賃金も「支払ったとき」と「消費したとき」を分けて記録します。
支払ったときは、まだ製品に結びついていません。給料日に賃金を支払い、いったん賃金の勘定にためておきます。実際に作業して製品づくりに使われたとき、その分が原価になります。作業員が製品を組み立てた時間の分だけ、賃金が原価へと形を変えていきます。
ポイント
賃金も、支払ったときと消費したときを分けて記録します。実際に作業して製品づくりに使われたときに、その分がはじめて原価になります。
直接労務費と間接労務費
賃金の消費額も、製品との結びつきで直接労務費と間接労務費に分けます。製品を直接加工する作業(直接作業)にかかった分は直接労務費として仕掛品へ、それ以外の作業(間接作業や、手が空いて待っていた手待時間)にかかった分は間接労務費として製造間接費へ集めます。
消費額は、作業時間に「賃率(ちんりつ)」を掛けて計算します。賃率とは、作業1時間あたりの賃金のことです。ここでは、あらかじめ決めておいた予定賃率を使う場合を見ます。
予定賃率が1時間あたり ¥1,200、当月の直接工の作業時間が直接作業300時間・間接作業20時間だとすると、消費額は次のようになります。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 仕掛品 | 360,000 | 賃金 | 384,000 |
| 製造間接費 | 24,000 |
直接労務費は 300時間 かける ¥1,200 で ¥360,000 なので、仕掛品の借方に記入します。間接労務費は 20時間 かける ¥1,200 で ¥24,000 なので、製造間接費の借方に記入します。消費した合計 ¥384,000 だけ賃金を貸方に記入します。
賃率差異
予定賃率は見込みの賃率なので、実際にかかった賃率とずれることがあります。実際の賃率が ¥1,250 だったとすると、実際の消費額は 320時間 かける ¥1,250 で ¥400,000 です。予定で振り替えた ¥384,000 との差額 ¥16,000 を「賃率差異(ちんりつさい)」という勘定で処理します。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 賃率差異 | 16,000 | 賃金 | 16,000 |
実際の消費額 ¥400,000 が予定の消費額 ¥384,000 を上回っています。予定では賃金を ¥384,000 しか減らしていないため、賃金勘定には実際より ¥16,000 多く残っています。この差を賃金勘定から取り除くので、賃金を貸方に記入します。相手は賃率差異です。実際が予定を上回る差異は、原価が見込みより多くかかったことを表す不利な差異で、借方に記入します。材料費の材料消費価格差異と同じ考え方です。
例題
次の取引を仕訳してみましょう。
当月、直接工の賃金を消費した。予定賃率は1時間あたり ¥1,000、直接作業時間は250時間、間接作業時間は30時間であった。
答え合わせ
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 仕掛品 | 250,000 | 賃金 | 280,000 |
| 製造間接費 | 30,000 |
直接労務費は 250時間 かける ¥1,000 で ¥250,000 なので仕掛品へ、間接労務費は 30時間 かける ¥1,000 で ¥30,000 なので製造間接費へ振り替えます。消費した合計 ¥280,000 だけ賃金を貸方で減らします。
応用
次の取引を仕訳してみましょう。
当月の直接工の賃金について、予定賃率による消費額は ¥280,000、実際賃率による消費額は ¥273,000 であった。この差額を賃率差異勘定に振り替える。
答え合わせ
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 賃金 | 7,000 | 賃率差異 | 7,000 |
今回は実際の消費額 ¥273,000 が予定の消費額 ¥280,000 を下回っています。予定では賃金を ¥280,000 減らしていますが、実際にかかったのは ¥273,000 なので、賃金勘定には ¥7,000 少なく残っています。差の分だけ賃金を借方に戻し、相手は賃率差異です。実際が予定を下回る差異は、原価が見込みより少なくてすんだことを表す有利な差異で、貸方に記入します。不利な差異と貸借が反対になります。
注意
賃率差異は、実際が予定を上回れば不利な差異で借方、下回れば有利な差異で貸方に記入します。上回るか下回るかで貸借が反対になる点に気をつけましょう。
分からなかった点・気になった点
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