経営戦略手法
会社が限られたお金と人をどこへ向けるかを決める道具を知り、SWOT分析とPPMを使って、自社の立ち位置と伸ばす事業を説明できるようになります。
ねらい
会社が「何をやり、何をやらないか」を決めるための考え方を学びます。このレッスンを終えると、SWOT分析とPPMという2つの代表的な道具を使い分け、他社と組む方法の違いを説明できるようになります。
戦略とは、やらないことを決めること
会社が使えるお金・人・時間には限りがあります。すべてに手を出すと、どれも中途半端になります。そこで「どこへ集中し、どこから手を引くか」をあらかじめ決めます。これが経営戦略です。
戦略は2つの階層で考えます。
- 全社戦略… 会社全体としてどの事業を持つかを決める。飲食店を続けながら食品の通販を始めるか、といった話です。
- 事業戦略… ひとつの事業の中で、どう戦って勝つかを決める。その飲食店を安さで勝負するか、味で勝負するか、といった話です。
事業戦略の型は3つに整理されています。コストリーダシップ戦略(誰よりも安く作る)、差別化戦略(他にない価値をつける)、集中戦略(狭い範囲に絞って強くなる)です。狭い市場に絞る集中戦略のうち、大手が来ない小さな市場を選ぶやり方をニッチ戦略と呼びます。
ポイント
安さと独自性を同時に狙うと、どちらつかずになります。安くするには余計なものを削る必要があり、独自の価値をつけるにはお金がかかるからです。だから型を選びます。
SWOT分析 — 自社を4つの窓から見る
戦略を立てる前に、まず現在地を知ります。SWOT分析は、自社を内側と外側、良いことと悪いことの2つの軸で分けて整理する道具です。
- 強み(Strength)… 自社が持っている良いもの。腕のいい職人、長年の常連客。
- 弱み(Weakness)… 自社が抱えている足りないもの。店が狭い、若い客が来ない。
- 機会(Opportunity)… 外の世界に起きている追い風。近くに大学ができた。
- 脅威(Threat)… 外の世界に起きている向かい風。材料の値段が上がった。
強みと弱みは自分で変えられます。機会と脅威は自分では変えられません。だから機会と脅威には「合わせる」という向き合い方をします。強みを機会にぶつけるのが、いちばん素直な打ち手です。
現在地を見る道具は他にもあります。3C分析は、顧客(Customer)・競合(Competitor)・自社(Company)の3方向から見る方法です。SWOTが「良い/悪い」で切るのに対し、3Cは「誰の話か」で切ります。
PPM — どの事業にお金を回すか
複数の事業を持つ会社では、どの事業を伸ばし、どの事業から引くかを決めなければなりません。PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)は、市場の成長率と自社の市場シェアの2軸で事業を4つに分けて考える道具です。
| 呼び名 | 市場の成長 | 自社のシェア | 意味すること |
|---|---|---|---|
| 花形 | 高い | 高い | よく売れるが、競争が激しく投資も要る |
| 金のなる木 | 低い | 高い | 市場は伸びないが、安定して稼げる |
| 問題児 | 高い | 低い | 伸びる市場にいるが、まだ勝てていない |
| 負け犬 | 低い | 低い | 撤退を考える |
この図の要点は、お金の流れです。金のなる木で稼いだお金を、問題児に投じて花形へ育てます。金のなる木は市場が伸びないので、そこへ追加で投資しても大きくは増えません。稼いだ分を、伸びる市場の事業へ回すわけです。
他社と組む — 資本を入れるかどうかで分かれる
自社だけで足りないときは、外の力を使います。違いは、お金(資本)を入れるかどうかです。
- M&A… 他社を買う、または合併する。相手が自社の一部になります。時間を買う方法です。
- アライアンス(提携)… 独立したまま協力する。共同開発や販売協力など。
- 合弁会社(ジョイントベンチャー)… 複数の会社が出資して、新しい会社を一緒に作る。
- アウトソーシング… 自社の業務を外の会社に任せる。相手は協力先であって、仲間ではありません。
自社の強みの中核をコアコンピタンスといいます。他社がまねしにくい、その会社ならではの力のことです。コアコンピタンス以外を外に出すのが、アウトソーシングの基本的な考え方です。中核まで外に出してしまうと、自社に何も残りません。
まとめ
戦略とは、限りある力をどこへ向けるかの決定です。SWOT分析で現在地を知り、PPMでお金の配り先を決めます。そして自社に足りないものは、資本を入れるM&Aか、入れない提携で補います。手放してよいのは中核以外だけです。
理解の確認
市場は伸びていないものの、自社のシェアが高く安定して利益が出ている事業は、PPMのどこに置かれ、その利益はどう使うのが基本でしょうか。
答え: 金のなる木に置かれます。市場が成長していないため追加投資をしても売上は大きく伸びず、投資の効率が悪いからです。ここで得た利益は、市場は伸びているがシェアがまだ低い問題児へ回し、花形に育てることを狙います。稼ぐ事業と育てる事業を分けて考えるのが、PPMの考え方です。
分からなかった点・気になった点
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