情報システム戦略
情報システムを経営の目的から考える筋道をつかみ、全体最適と部門最適の違い、エンタープライズアーキテクチャの4つの層を説明できるようになります。
ねらい
会社が情報システムをどう位置づけるかを学びます。このレッスンを終えると、システムを部門ごとに作ると何が起きるのか、それを防ぐためにどんな設計図を持つのかを説明できるようになります。
システムは、経営の目的から決まります
「便利そうだから導入する」で入れたシステムは、たいてい使われなくなります。情報システム戦略とは、経営の目的から逆算して、どんなシステムをどの順で持つかを決めることです。
順番は次のとおりです。経営戦略があり、それを実現するために情報システム戦略があります。逆ではありません。システムが先にあって経営を決めるのではなく、経営がやりたいことに対してシステムを合わせます。
情報システム戦略に責任を持つ役職をCIO(最高情報責任者)といいます。経営者の一員として、システムへの投資を判断します。
部門ごとに作ると、つながらなくなります
会社の中では、必要になった部門がそれぞれシステムを作りがちです。個々には最適でも、会社全体では最適になりません。
部門ごとに作ると、こうなります。
- 同じデータを何度も入力する。顧客の住所を、営業部門と経理部門が別々に登録します。
- 数字が食い違う。どちらかが更新を忘れると、どちらが正しいか分かりません。
- つなぐ費用が後から出る。あとで連携させようとすると、作り直しに近い費用がかかります。
この状態を部門最適、会社全体で見て最も良い状態を全体最適といいます。情報システム戦略の役割は、全体最適の側に寄せることです。
ポイント
部門最適は、誰かが手を抜いた結果ではありません。各部門が自分の仕事を良くしようと真面目に取り組んだ結果として起きます。だから、部門の努力に任せていては解決しません。全社で見る立場が要ります。
エンタープライズアーキテクチャ — 会社の設計図
エンタープライズアーキテクチャ(EA)は、会社の業務とシステムの姿を4つの層に分けて描く手法です。現在の姿と、目指す姿の両方を描き、その差から何をすべきかを決めます。
| 層 | 何を描くか |
|---|---|
| ビジネスアーキテクチャ | 業務の流れと組織 |
| データアーキテクチャ | 扱うデータの構造と関係 |
| アプリケーションアーキテクチャ | どんなシステムがどう連携するか |
| テクノロジアーキテクチャ | サーバやネットワークなどの技術基盤 |
上の層ほど「何をするか」、下の層ほど「どう実現するか」に近づきます。上から順に決めるので、業務の姿が決まらないうちに機器を選ぶ、という順序の逆転を防げます。
現在の姿をAs-Is、目指す姿をTo-Beと呼びます。この2つの差が、やるべきことです。
業務モデルとデータの活かし方
会社の業務を図に表したものを業務モデルといいます。誰が何をどの順でやるかを共通の絵にすると、部門をまたぐ話し合いができます。
システムに蓄えたデータを経営の判断に使うことをBI(ビジネスインテリジェンス)といいます。集めるだけでなく、集計・分析して次の手を決めるところまでを指します。
近年はDX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉も使われます。既存の業務をそのまま電子化するのではなく、デジタルを前提に事業のあり方そのものを作り変えることを指します。紙の申込書をPDFにするのは電子化であって、DXとは呼びません。
まとめ
情報システム戦略は、経営の目的から逆算してシステムを決めることです。部門ごとに作ると部門最適に陥り、データが重複して数字が食い違います。エンタープライズアーキテクチャは会社の姿を4層で描き、現在(As-Is)と目指す姿(To-Be)の差からやるべきことを出します。
理解の確認
ある会社では、営業部門と経理部門がそれぞれ独自に顧客管理システムを導入しており、同じ顧客の住所変更を両方に入力する運用になっています。この状態は何と呼ばれ、なぜ各部門の努力だけでは解決しないのでしょうか。
答え: 部門最適の状態です。各部門は自部門の業務を良くしようとして、自分たちに合ったシステムを選んでおり、その判断自体は部門の中では正しいものです。しかし全社で見ると、同じデータを二重に持ち、二度入力し、更新漏れがあれば数字が食い違うという損失が生じます。この損失は個々の部門の帳簿には現れないため、部門の立場からは見えず、部門の努力では解決できません。全社を見る立場(CIOと情報システム戦略)が、全体最適の観点で判断する必要があります。
分からなかった点・気になった点
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