G検定(ジェネラリスト検定)
まはらのびすきょり
マハラノビス距離
Mahalanobis Distance
マハラノビス距離は、ある点がデータの分布(平均と散らばり方)からどれだけ離れているかを測る多変量の距離の指標です。平均から標準偏差にして何個分離れているかという考え方を多次元に広げたもので、共分散行列を使って変数ごとのばらつきの大きさや変数どうしの相関を考慮に入れます。そのため、データが楕円形に広がっているときに、各座標の差だけで測るユークリッド距離では見誤る、点と分布の近さを見積もるために使われます。G検定シラバス2024では、相関・多変量・距離の対象キーワードとして挙げられています。
詳しい説明
マハラノビス距離とは
マハラノビス距離(Mahalanobis Distance)は、インドの統計学者マハラノビス(Mahalanobis)の名にちなむ距離の指標です。2点のあいだの距離というより、まず、ある点とデータの分布とのあいだの距離を測るものとして理解すると分かりやすくなります。
1つの変数だけを考えるなら、ある値が平均から標準偏差にして何個分離れているかで、その値がどれだけ平均から外れているかを表せます。マハラノビス距離は、この考え方を変数が複数ある多次元のデータに広げたものです。点がデータの平均ベクトルの位置にあるときにゼロになり、平均から離れるほど大きくなります。
比べる相手としてのユークリッド距離
マハラノビス距離の特徴は、ユークリッド距離と比べるとはっきりします。ユークリッド距離は、2点のあいだで各座標の差を2乗して合計し、その平方根を取った値で、私たちがふだん定規で測る直線の長さに当たります。
ユークリッド距離は、どの座標の差も同じ重みで扱います。データがどの方向に大きくばらついているか、変数どうしがどれだけ一緒に動くかといった、データの散らばり方の情報は計算に入りません。
ユークリッド距離では不十分になる場面
データの点の集まり(クラスタ)が、きれいな円形ではなく楕円形に広がっている場合を考えます。楕円形になるのは、ある変数のばらつきが他の変数より大きいときや、変数どうしに相関があって斜めに伸びた形になるときです。
このとき、楕円の長い方向に中心から離れた点と、短い方向に中心から離れた点では、ユークリッド距離で同じくらい遠くても、意味が違います。長い方向にはもともとデータが大きく散らばっているので、その方向に少し離れた点はクラスタの一員としてごく自然です。一方、短い方向にはデータがほとんど散らばっていないので、同じだけ離れた点はクラスタから大きく外れています。
つまり、ユークリッド距離で中心から遠い点が、近い点よりもクラスタに属しにくいとは結論できません。ユークリッド距離はデータのばらつき方を考慮しないため、ある点が実際にどれだけ分布に近いかを見積もる目的には効果的に使えないのです。
共分散行列で測り直す仕組み
マハラノビス距離は、データの形を表す共分散行列を使ってこの問題を解決します。共分散行列は、変数どうしの共分散を並べた正方行列で、各変数がどれだけばらついているか、変数どうしがどれだけ一緒に動くかをまとめて表しています。
マハラノビス距離では、点と平均ベクトルの差(2点間なら2点の差)を、共分散行列の逆行列で変換してから長さを測ります。直感的には、データのばらつきが大きい方向では距離を割り引き、ばらつきが小さい方向では距離を重く数える、データの形に合わせたものさしで測り直していると考えられます。変数どうしの相関もこのものさしに含まれるので、斜めに伸びた楕円形の分布にも合わせて測れます。
この性質から、マハラノビス距離は単位を持たず、変数のスケール(測る単位の大きさ)に依存せず、データの相関を考慮に入れた指標になります。
軸をそろえればユークリッド距離と一致する
それぞれの軸を分散が1になるように再スケールした場合、マハラノビス距離は、変換後の空間での通常のユークリッド距離と一致します。言い換えると、マハラノビス距離は、データのばらつきを均等にそろえた空間で測ったユークリッド距離とみなせます。
ここから分かるのは、同じ2点であっても、軸のスケールや相関を考慮するかどうかで距離の値が変わるということです。そのまま測ればユークリッド距離、データの散らばり方に合わせて空間を整えてから測ればマハラノビス距離、という関係です。両者は別々の考え方というより、どの空間で直線の長さを測るかの違いとして整理できます。
具体例で見る
3つの変数を持つ5個のデータ点、(64,580,29)、(66,570,33)、(68,590,37)、(69,660,46)、(73,600,55)を考えます。このデータの平均は(68,600,40)で、ここから共分散行列とその逆行列が計算されます。
この共分散行列と逆行列を使うと、点(66,640,44)の平均からのマハラノビス距離は約5.33になります。これは、データのばらつき方と変数どうしの相関を踏まえて測ったときに、この点が平均からどれだけ外れているかを単位のない数で表した値です。2つ目の変数だけを見ると数値の差が大きく見えますが、マハラノビス距離では、その変数がもともとどれだけ大きくばらつくかを踏まえて差が評価されます。
また、データ点どうしである(66,570,33)と(69,660,46)の間のマハラノビス距離は約3.24と計算されます。このように、マハラノビス距離は点と分布の距離だけでなく、同じ分布の中にある2点の距離にも使えます。
まとめ
ユークリッド距離は座標の差をそのまま使う直線の長さで、データの散らばり方を考えません。マハラノビス距離は共分散行列の逆行列を使ってばらつきの大きさと相関を考慮し、ある点が分布にどれだけ近いかを測ります。楕円形に広がったデータを扱うときは、どちらの距離で測っているかによって、近い点と遠い点の判断が変わりうることを押さえておきましょう。
試験で問われること
G検定
- マハラノビス距離が、点とデータの分布(平均と散らばり方)との距離を測る指標であり、平均から標準偏差にして何個分離れているかという考え方の多次元版であることを説明できますか。
- データが楕円形に分布しているとき、ユークリッド距離で中心から遠い点が必ずしも分布に属しにくいとは言えない理由を、ばらつきの方向の違いから説明できますか。
- マハラノビス距離が共分散行列の逆行列を使うことで、変数ごとのばらつきの大きさと変数どうしの相関を考慮し、単位を持たずスケールに依存しない指標になることを確認しておきましょう。
- 各軸を分散1に再スケールした空間では、マハラノビス距離が通常のユークリッド距離と一致するという関係を確認しておきましょう。
最終更新日: 2026/09/23