G検定(ジェネラリスト検定)
でんどらる
DENDRAL
DENDRAL
Dendral Program
DENDRALは、質量分析のデータから有機化合物の分子構造について仮説を立てるプログラムです。化学の詳しい知識を候補の絞り込みに使い、知識ベースをほかの部分から分けた設計をとったことから、最初のエキスパートシステムとして知られています。
詳しい説明
何をするシステムだったか
DENDRAL(デンドラル)は、有機化合物の分子構造を推定するために作られたコンピュータプログラムです。入力は質量分析のデータです。質量分析は分子を壊し、できた断片の重さを測る測定法で、その結果からは、どの重さの断片がどれだけ出たかが分かります。DENDRALはこのデータを受け取り、この化合物はこういう構造をしているのではないか、という分子構造の仮説を出力します。
1993年にロバート・K・リンゼイ(Robert K. Lindsay)、ブルース・G・ブキャナン(Bruce G. Buchanan)、エドワード・A・ファイゲンバウム(Edward A. Feigenbaum)、ジョシュア・レーダーバーグ(Joshua Lederberg)の4人がまとめた論文は、題名でDENDRALを「科学的仮説形成のための最初のエキスパートシステム」と呼んでいます。エキスパートシステムとは、専門家が持つ知識をコンピュータに組み込み、専門家に近い判断をさせるシステムのことです。
膨大な候補を化学の知識で絞り込む
原子の種類と数が同じでも、原子どうしのつなぎ方が違えば別の分子になります。原子の数が増えるほど考えられる構造は急に増えるため、候補を一つずつすべて調べるやり方では、現実的な時間で答えにたどり着けません。
DENDRALがとった方針は、化学という問題領域についての詳細で、この作業に固有の知識をヒューリスティクスとして使い、候補を絞り込むことでした。ヒューリスティクスとは、いつも正しいとは限らないものの、調べる範囲を大きく狭められる経験的な手がかりのことです。化学者であれば、質量分析の結果にどの断片が現れたかを見て、その結果と合わない構造は最初から考えません。DENDRALは、こうした専門家の手がかりをプログラムの中で使いました。
リンゼイらの論文は、DENDRALをこの戦略を体現した最初の大規模プログラムの一つと位置づけています。
知識ベースを切り離した設計
DENDRALは、化学の知識を集めた部分である知識ベースと、プログラムのほかの部分とを分けて持つ設計を初めて採用したシステムでもあります。知識ベースが分かれていれば、化学の知識を書き足したり定義し直したりするときに、プログラム全体を作り直さずに済みます。知識を独立して編集し直せることが、この設計の利点です。
医療診断を扱ったマイシン(MYCIN)も、知識ベースを分けた設計をとっています。ファイゲンバウムは1977年の論文で、DENDRALとマイシンを知識工学の実践例として並べて紹介しています。知識工学(knowledge engineering)とは、専門家の知識を取り出してプログラムに組み込み、実際の問題を解かせる取り組みのことです。
知識は力であるという原則
リンゼイらは、DENDRALが「知識は力である」という原則を初めてはっきり打ち出したシステムだと述べています。論文ではこれをknowledge principleと呼んでいます。プログラムが問題を解く力の源は、その問題領域についてプログラムが持っている知識にある、という考え方です。
DENDRALが解いたのは分子構造の推定という狭い問題ですが、狭い領域に深い知識を持たせれば専門家に近い仕事ができる、という見方をこのシステムは具体的な形で示しました。
知識を集める難しさという課題
知識が力の源であるなら、どれだけ良い知識を集めて書き込めるかが性能を左右します。ファイゲンバウムは1977年の論文で、知識工学者が直面する問題として、専門家の知識をプログラムへ移し取ることの難しさを挙げ、この知識獲得の問題に集中して取り組む必要があると述べました。この問題は、いまでは知識獲得のボトルネックと呼ばれることがあります。
同じ1977年の論文には、DENDRALに関連するシステムとしてMETA-DENDRALの名も挙がっています。
試験で問われること
G検定
- DENDRALは、質量分析のデータを入力とし、有機化合物の分子構造の仮説を出力するシステムです。扱う対象が化学の分子構造の推定であり、医療診断を扱ったマイシンとは対象の分野が異なります。
- 問題領域についての詳細で作業に固有の知識をヒューリスティクスとして使い、膨大な構造の候補を絞り込むという戦略を体現した、最初の大規模プログラムの一つとされています。
- 知識ベースをプログラムのほかの部分から分け、知識を独立して編集し直せる設計を初めて採用したシステムです。マイシンも同じく知識ベースを分けた設計をとっています。
- 「知識は力である」という原則を初めて明確に打ち出したシステムとされ、リンゼイらによる1993年の論文は、題名でDENDRALを科学的仮説形成のための最初のエキスパートシステムと呼んでいます。
- 知識の量と質が性能を決めるという方針は、専門家の知識をプログラムへ移し取る難しさという、知識獲得の問題を同時に浮かび上がらせました。
最終更新日: 2026/09/23