記述統計とばらつき:データの中心と散らばりをつかむ
たくさんの数を少数の値で言い表す記述統計を学びます。基礎層では、データの中心を表す平均・中央値・最頻値と、散らばりの大きさという見方を身近な例でつかみます。深掘り層では、度数分布・外れ値と、散らばりを数にした分散・標準偏差、そして時系列をならす移動平均までを数式も言葉で読み下しながら説明できるようになります。
ねらい
このレッスンでは、たくさんの数をわずかな値で言い表す記述統計(きじゅつとうけい)を学びます。データがたくさんあると、そのままでは全体の様子がつかめません。そこで、中心はどのあたりか、どれだけ散らばっているか、という少数の値に要約します。
前半の基礎層では、データの中心を表す平均・中央値・最頻値と、「散らばりの大きさ」という見方をつかみます。前提となる数学の知識がなくても、ここは読み切れます。
後半の深掘り層では、散らばりを数にする分散と標準偏差、そして時系列をならす移動平均に、数式も言葉で読み下しながらふみこみます。こちらは、ある程度の知識のある人に向けた発展です。
基礎
データの中心を表す平均・中央値・最頻値の3つの見方と、値がどれだけ広がっているかという散らばりを見ます。
1. データの中心を表す3つの見方
「だいたい何点くらいか」を表す代表的な見方が3つあります。中心のとらえ方が、それぞれ違います。
1つ目は平均(へいきん)です。全員の点数を合計し、人数で割った値です。40人の点数を全部足して40で割れば、平均点になります。もっともよく使われる中心の見方です。
2つ目は中央値(ちゅうおうち)です。点数を小さい順にならべたとき、ちょうど真ん中に来る値です。40人なら、下から20番目と21番目のあたりの点数です。順番の真ん中を中心とみなす見方です。
3つ目は最頻値(さいひんち)です。もっとも多くの人が取った、いちばん人数の多い点数です。60点の人が最も多ければ、最頻値は60点です。いちばんありふれた値を中心とみなす見方です。
この3つは、同じデータでも別の値になることがあります。どれが中心としてふさわしいかは、データの散らばり方によって変わります。
ポイント
中心の見方は1つではありません。合計を人数で割る平均、順番の真ん中の中央値、いちばん多い最頻値という3つがあり、それぞれ中心のとらえ方が違います。
2. もう1つの大事な見方、散らばり
中心だけでは、データの様子は分かりません。散らばりぐあいも大事です。
たとえば、平均点が60点のクラスが2つあるとします。一方は、全員が55点から65点にかたまっています。もう一方は、30点の人もいれば90点の人もいて、大きくばらついています。平均は同じ60点でも、この2つのクラスはまるで違います。
このように、値が中心のまわりにどれだけ広がっているかを散らばりといいます。散らばりが小さいほど値はそろっており、大きいほどばらついています。中心と散らばりの2つがそろって、はじめてデータの様子が見えてきます。
ここまでの要点
- データの中心には、平均・中央値・最頻値という3つの見方があります。
- 中心だけでなく、値がどれだけ広がっているかという散らばりも大事です。
まずは全体像をつかめれば十分という人は、ここで区切って大丈夫です。「データは中心と散らばりの2つでつかむ」と押さえていれば、この先の深掘りに進む土台はできています。
発展
ここからは、データの分布を目で見る度数分布、中心をゆがめる外れ値、そして散らばりを数にする分散と標準偏差をくわしく見ます。数式も少し使いますが、記号は必ず言葉で読み下します。
3. 分布を目で見る、度数分布
たくさんの点数を全体として見るために、値をいくつかの区間に区切り、それぞれの区間に何人いるかを数えます。「50点から59点が8人、60点から69点が15人」といった数え方です。このように、区間ごとの個数をまとめた表を度数分布(どすうぶんぷ)といいます。ここでの「度数」とは、その区間に入るデータの個数のことです。
度数分布を棒の高さで表すと、どのあたりに山があるかが目で分かります。第1章で学んだ確率分布が、実際のデータの上でどんな形になっているかを見ているのが、この度数分布だと考えると、つながりが見えてきます。
理解の確認
度数分布は、値をいくつかの区間に区切り、それぞれの区間に入るデータの個数をまとめた表です。棒の高さで表すと、データがどのあたりに集まっているかが目で分かります。
4. 中心をゆがめる、外れ値
データの中に、他の値から大きく離れた値がまじることがあります。この、極端に離れた値を外れ値(はずれち)といいます。入力ミスや、まれな特別な事情で生まれることが多い値です。
外れ値は、平均を大きく動かします。たとえば、ふつうの人の年収の中に、1人だけ何十億円もの人がまじると、平均は実感からかけ離れた高い値になります。合計を使う平均は、極端な1つの値に引っぱられるからです。
一方で、中央値は外れ値の影響を受けにくくなります。順番の真ん中を取るため、両はしに極端な値があっても、真ん中の値はほとんど動きません。だから、外れ値がありそうなデータでは、中央値のほうが中心をよく表すことがあります。第1節で中心の見方を3つ挙げたのは、こうした使い分けのためです。
注意
平均は外れ値に引っぱられます。極端な値がまじるデータでは、平均だけを見て判断すると実感からずれることがあります。中央値もあわせて見ましょう。
理解の確認
外れ値は、他の値から大きく離れた極端な値です。合計を使う平均は外れ値に強く引っぱられますが、順番の真ん中を取る中央値は外れ値の影響を受けにくくなります。
5. 散らばりを数にする、分散と標準偏差
第2節で見た散らばりをいよいよ数で表します。
考え方はこうです。まず、各データが中心からどれだけ離れているかを平均を基準にして測ります。各値から平均を引けば、そのずれが出ます。ただし、このずれはプラスにもマイナスにもなり、そのまま足すと打ち消し合ってしまいます。
そこで、それぞれのずれを二乗します。二乗(にじょう)とは、その数を自分自身にかけることです。二乗すると、マイナスのずれもプラスに変わり、打ち消し合いがなくなります。この二乗したずれをすべてのデータについて平均した値を分散(ぶんさん)といいます。分散が大きいほど、データは散らばっています。
ただし分散は、二乗したことで単位も二乗になり、もとの値と直に比べにくくなります。そこで、分散の平方根を取ります。平方根(へいほうこん)とは、二乗するともとの数になるような値のことです。分散の平方根を取ると、単位がもとに戻ります。この値を標準偏差(ひょうじゅんへんさ)といいます。英語では standard deviation(スタンダードディビエーション)と表記します。標準偏差は、散らばりの大きさをもとの単位で表した、もっともよく使われる指標です。
式で書くと、分散 = (各値 − 平均)を二乗したものの平均、標準偏差 = √(分散)となります。ここで √ は平方根を表す記号で、√(分散)は「分散の平方根を取る」と読みます。言葉で述べたことをそのまま記号に置きかえただけで、新しい約束ごとはありません。
第1章で学んだ正規分布は、中心の平均と、この標準偏差の2つで形が決まりました。標準偏差が大きいほど、つりがねは横に広がります。
理解の確認
分散は、各値が平均からどれだけ離れているかを二乗し、それを平均した値です。二乗するのは、プラスとマイナスのずれが打ち消し合わないようにするためです。標準偏差は、分散の平方根を取って単位をもとに戻した値で、散らばりの大きさをもっともよく表します。
6. 時間で動くデータをならす、移動平均
最後に、時間とともに変わっていくデータの見方を1つ加えます。毎日の気温や、日ごとの売上のように、順番に並んだデータを時系列(じけいれつ)データといいます。時系列データは、日々こまかく上下するため、そのままでは全体の流れが見えにくくなります。
そこで、いくつかの連続した期間をまとめて平均を取り、その平均をずらしながら計算していきます。この、区間をずらしながら取る平均を移動平均(いどうへいきん)といいます。たとえば、直近7日間の平均を毎日計算しなおせば、1日ごとのこまかな上下がならされ、上がっているのか下がっているのかの流れが見えてきます。
移動平均は、こまかな変動を消して、大きな流れを取り出すための道具です。天気や景気、株価などの時系列を読むときによく使われます。
理解の確認
移動平均は、連続したいくつかの期間の平均を区間をずらしながら計算していく見方です。日ごとのこまかな上下がならされ、上がっているのか下がっているのかという大きな流れが見えやすくなります。
理解度の確認
説明できる項目にチェックを入れましょう。すべて確認できたら、完了ボタンで記録します。
分からなかった点・気になった点
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