贈与と法律
贈与契約の性質(諾成契約・書面によらない贈与の解除)、定期贈与・負担付贈与・死因贈与の違い、親族の範囲を説明できるようになります。
ねらい
第6章では、財産を次の世代へ引き継ぐルールを学びます。最初のこのレッスンでは、贈与の法律面を扱います。終えると、贈与契約の性質、贈与の4つの種類の違い、民法上の親族の範囲を説明できるようになります。
ストーリー
第6章の主人公は、そろそろ財産の整理を考え始めた70代の山田さん夫妻です。「生きているうちに子どもへ財産を渡したい。口約束でも贈与になるのか。『自分が死んだら渡す』という約束はどうなるのか」。贈与は身近な行為ですが、法律上の性質を知らないと思わぬ結果になります。
贈与契約の性質
贈与は、自分の財産を無償で相手に与える意思を示し、相手が受諾することによって成立する契約です。
- 諾成契約: 当事者の合意だけで成立し、書面の作成や財産の引渡しは成立の要件ではありません。口約束の贈与も契約として有効です。
- 書面によらない贈与の解除: 口約束の贈与は、まだ履行が終わっていない部分については、各当事者が解除できます。すでに履行が終わった部分(渡してしまった財産)は解除できません。
- 書面による贈与は、原則として解除できません。
ポイント
「口約束でも成立する。ただし渡す前ならやめられる。書面にしたらやめられない」という3点セットで覚えます。
贈与の種類
| 種類 | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 単純贈与 | 財産を無償で与えるだけの贈与 | 基本の形 |
| 定期贈与 | 「毎年100万円を10年間」のように定期の給付を目的とする贈与 | 贈与者または受贈者の死亡により効力を失う |
| 負担付贈与 | 受贈者に一定の負担(介護をする・ローンを引き継ぐなど)を課す贈与 | 贈与者は負担の限度で売主と同様の担保責任を負う。受贈者が負担を履行しないときは契約を解除できる |
| 死因贈与 | 「自分が死んだら与える」という、贈与者の死亡によって効力が生じる贈与 | 遺贈(遺言による贈与)の規定が準用される。取得した財産は贈与税ではなく相続税の課税対象になる |
注意
死因贈与は「贈与」という名前ですが、効力が生じるのが死亡時であるため、税金の世界では相続税の対象になります。名前と税金のずれが最頻出の論点です。
親族の範囲
民法上の親族は、次の範囲と定められています。
- 6親等内の血族(父母・子は1親等、祖父母・孫・兄弟姉妹は2親等、おじ・おばは3親等など)
- 配偶者
- 3親等内の姻族(配偶者の父母や兄弟姉妹など、婚姻によってつながる関係)
「血族は6親等・姻族は3親等」という組み合わせで覚えます。この親族の範囲は、扶養義務や後のレッスンで学ぶ相続の場面の土台になります。
例題
次の記述が適切か、不適切かを考えてみましょう。
書面によらない贈与は、既に履行が終わった部分についても、各当事者が解除することができる。
答え合わせ
不適切です。書面によらない(口約束の)贈与で解除できるのは、まだ履行が終わっていない部分だけです。すでに渡してしまった財産について解除はできません。「履行前は解除できる・履行後はできない」という線引きが問われます。
応用
贈与の種類と税金を考えてみましょう。
山田さんは長男と「自分が死んだら自宅を与える」という契約を結んだ。この契約の種類と、長男が自宅を取得したときに課される税金は何か。
答え合わせ
死因贈与です。贈与者である山田さんの死亡によって効力が生じる贈与で、遺贈の規定が準用されます。長男が取得した自宅は、贈与税ではなく相続税の課税対象になります。「生前に渡せば贈与税・死亡を原因に渡れば相続税」という大きな整理は、次のレッスン以降の贈与税・相続税の学習の入り口になります。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 相続人が受け取る死亡保険金の非課税限度額の選択解く
- 死亡保険金の納税資金対策としての活用に関する正誤判定解く
- 上場株式の相続税評価の選択解く
- 生命保険契約に関する権利の評価に関する正誤判定解く
- 特定居住用宅地等の減額割合の選択解く