リスク管理と保険
必要保障額の考え方とライフステージに応じた保険設計、家庭と事業それぞれのリスクへの保険の組み合わせ方を説明できるようになります。
ねらい
第2章で学んだ保険の知識を使って、実際の保険設計を考えます。このレッスンを終えると、必要保障額の考え方と、家庭・事業それぞれのリスクにどの保険を組み合わせるかを説明できるようになります。
ストーリー
パン屋の森さんは、この章で学んだ保険の知識をもとに、わが家と店の保障の設計図を作ることにしました。「保険は入れば入るほど安心だが、保険料の払いすぎは家計を圧迫する。必要な保障だけに絞りたい」。そのために最初に計算するのが「必要保障額」です。
必要保障額の考え方
必要保障額とは、世帯主などが死亡した場合に遺族に必要となるお金のうち、準備が足りない部分の金額です。次の引き算で求めます。
ポイント
必要保障額 = 遺族の支出の総額(生活費・教育費・住居費など)− 遺族の収入の総額(遺族年金・配偶者の収入・貯蓄など)
引き算である点が大切です。第1章で学んだ遺族基礎年金・遺族厚生年金や、団体信用生命保険付きの住宅ローン(世帯主死亡でローンが完済される)があるため、支出の全額を民間保険で備える必要はありません。
必要保障額は、通常、末子が誕生した時点で最大になり、子どもの成長とともに教育費や生活費の残り期間が短くなるため、だんだん減っていきます。この形に合う保険が、年金形式で受け取る収入保障保険や、保険金額が段階的に減る逓減定期保険です。保障が一定の定期保険より保険料をおさえられます。
ライフステージ別の保険設計
家庭のリスクは、ライフステージによって重点が変わります。
| ライフステージ | 保障の重点 |
|---|---|
| 独身期 | 大きな死亡保障は不要。医療保障と就業不能への備えが中心 |
| 結婚・子育て期 | 死亡保障が最大。教育費と生活費を収入保障保険や定期保険で確保 |
| 子どもの独立後 | 死亡保障を縮小し、医療・介護の保障と老後資金の準備へ重心を移す |
| 老後 | 医療・介護保障と、相続対策としての終身保険の活用 |
家庭の損害保険の設計
物と賠償のリスクには、損害保険を組み合わせます。
- 住まいには火災保険を掛け、地震のリスクには地震保険を付帯します。
- 自動車には、自賠責保険に加えて任意の自動車保険(対人・対物・人身傷害・車両)で不足を補います。
- 日常生活の賠償リスク(自転車事故・子どもが物を壊した・飼い犬が人をかんだ)には、個人賠償責任保険で備えます。自動車保険や火災保険の特約として付けられることが多く、同居の家族も被保険者に含まれます。自転車事故の高額賠償に備える手段として重要性が増しています。
事業活動のリスク管理
事業には、家庭とは別のリスクがあります。森さんのパン屋を例に整理します。
- 経営者の死亡・就業不能: 経営者が倒れると、事業の借入金の返済や当面の運転資金が問題になります。事業保障資金の準備として、法人を契約者とする定期保険などの経営者向け生命保険を活用します。
- 従業員への備え: 従業員の死亡時の遺族保障には、会社が保険料を負担する総合福祉団体定期保険を活用します。業務中のけがには、労災保険の上乗せとなる傷害保険や労働災害総合保険があります。
- 物のリスク: 店舗・設備・商品には火災保険などを掛けます。
- 賠償のリスク: 店内でお客さまがけがをしたら施設所有(管理)者賠償責任保険、販売した食品による事故には生産物賠償責任保険(PL保険)で備えます。
- 休業のリスク: 火災などで営業できない間の利益の減少には、企業費用・利益保険で備えます。
例題
次の記述が適切か、不適切かを考えてみましょう。
世帯主の死亡に備える必要保障額は、通常、末子が誕生した時点で最大となり、その後は子どもの成長とともに逓減していく。
答え合わせ
適切です。末子誕生の時点では、これから必要な教育費と生活費の期間が最も長いため必要保障額は最大になり、子どもが成長するにつれて減っていきます。この形に合わせて、収入保障保険や逓減定期保険を使うと合理的な保険設計ができます。
応用
家庭の賠償リスクへの備えを考えてみましょう。
小学生の子どもが自転車で通行人に衝突し、けがをさせてしまった場合の損害賠償に備えるには、どの保険が適しているか。
答え合わせ
個人賠償責任保険が適しています。日常生活の事故で他人にけがをさせたり物を壊したりした場合の賠償責任を補償し、同居の家族(この例の子ども)が起こした事故も対象になります。傷害保険は自分のけがへの備えであり、他人への賠償は補償されません。自転車事故では高額の賠償判決の例もあり、火災保険や自動車保険の特約として付帯できるこの保険の重要性が増しています。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- がん保険の免責期間に関する正誤判定解く
- 特定疾病保障保険が対象とする三大疾病の選択解く
- 必要保障額が最大になる時期に関する正誤判定解く
- 自転車事故の賠償に備える保険の選択解く
- 保険加入とリスクファイナンシングに関する正誤判定解く