保険制度全般
民間保険の分類と募集の仕組み、クーリング・オフ、保険契約者保護機構、ソルベンシー・マージン比率など、契約者を守る制度を説明できるようになります。
ねらい
わが国の保険制度の全体像と、契約者を守る仕組みを学びます。このレッスンを終えると、民間保険の分類、保険募集の形態、クーリング・オフや保険契約者保護機構といった契約者保護の制度を説明できるようになります。
ストーリー
パン屋の森さんは、店と家族のために保険への加入を考え始めました。銀行の窓口でも、保険ショップでも、共済の窓口でも保険に入れるようです。「どこで入っても同じなのだろうか。もし保険会社がつぶれたら、払った保険料はどうなるのだろう」。
保険は長い付き合いになる契約だからこそ、売り方のルールと契約者を守る仕組みが法律で整えられています。その全体像を見ていきましょう。
社会保険と民間保険
第1章で学んだ公的医療保険や公的年金は、国が運営し加入が義務づけられる社会保険です。これに対して民間保険は、保険会社と契約者が自分の意思で契約する保険で、社会保険では足りない部分を上乗せで補う役割を持ちます。
民間保険は、次の3つの分野に分類されます。
| 分野 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 第一分野(生命保険) | 人の生死に関して保険金を支払う | 終身保険、定期保険、個人年金保険 |
| 第二分野(損害保険) | 偶然の事故による損害を補償する | 火災保険、自動車保険 |
| 第三分野 | 第一・第二の中間領域 | 医療保険、がん保険、介護保険 |
生命保険会社と損害保険会社は、互いの分野を直接兼営できません(子会社を通じた参入はできます)。第三分野は、生命保険会社も損害保険会社も扱えます。
保険の募集の形態
保険の募集(契約の勧誘・締結の媒介)には、登録などのルールがあります。
- 保険募集人は、保険会社のために保険を募集する人です。保険会社の役職員や代理店(銀行の窓口販売・保険ショップを含む)がこれにあたり、登録が必要です。
- 保険仲立人(保険ブローカー)は、特定の保険会社に属さず、顧客のために保険契約の締結を媒介する人です。
契約者を守る制度
クーリング・オフ
契約の申込み後でも、一定期間内であれば申込みの撤回や契約の解除ができます。期間は、申込日またはクーリング・オフに関する事項を記載した書面を受け取った日のいずれか遅い日から8日以内で、書面または電磁的記録で行います。保険期間が1年以内の契約や、法人が結んだ契約などは対象外です。
保険契約者保護機構
保険会社が破綻したときに契約者を守る仕組みとして、生命保険契約者保護機構と損害保険契約者保護機構があります。国内で事業を行う生命保険会社・損害保険会社には加入が義務づけられています。
ポイント
生命保険会社が破綻した場合、原則として破綻時点の責任準備金等(保険会社が将来の保険金の支払いに備えてあらかじめ積み立てておくお金)の90%まで補償されます(予定利率が高い一部の契約を除きます)。
ソルベンシー・マージン比率
大災害のような通常の予測を超えるリスクへの、保険会社の支払余力を示す指標です。200%以上が健全性の目安とされ、200%を下回ると監督当局による早期是正措置の対象になります。
共済と少額短期保険
保険会社の保険とよく似た仕組みに、共済と少額短期保険があります。
- 共済は、協同組合が組合員のために行う保障事業です。JA共済やこくみん共済などが代表で、それぞれの根拠法にもとづいて運営されます。
- 少額短期保険業者は、保険金額が少額で保険期間が短い保険だけを引き受ける事業者です。保険期間は生命保険・医療保険で1年以内、損害保険で2年以内、引き受けられる保険金額は1人あたり総額1,000万円以下に制限されています。
注意
注意したいのは、共済と少額短期保険業者の契約は、保険契約者保護機構による補償の対象外であることです。
保険業法と保険法
名前の似た2つの法律は、守備範囲が異なります。
- 保険業法は、保険会社や保険募集の事業に対する監督のルールを定めた法律です。免許制や募集人の登録、禁止行為(虚偽の説明、不利益となる事実を告げない乗換募集など)を定めます。
- 保険法は、保険契約の当事者(契約者と保険会社など)の間の権利義務を定めた法律です。保険会社の保険だけでなく、共済契約にも適用されます。
例題
次の記述が適切か、不適切かを考えてみましょう。
国内で事業を行う生命保険会社が破綻した場合、生命保険契約者保護機構により、原則として破綻時点の責任準備金等の90%まで補償される。
答え合わせ
適切です。生命保険契約者保護機構の補償は、原則として責任準備金等の90%までです。保険金額の90%ではなく、責任準備金等という積立ての90%である点も、正確に覚えておきたいポイントです。
応用
クーリング・オフの期間を考えてみましょう。
個人が保険期間10年の生命保険を申し込み、申込日の3日後にクーリング・オフに関する事項を記載した書面を受け取った。この契約の申込みを撤回できるのは、いつから数えて何日以内か。
答え合わせ
書面を受け取った日から8日以内です。クーリング・オフの起算日は、申込日と書面を受け取った日のいずれか遅い日です。この例では書面の受取りが申込日より後なので、受け取った日から数えます。撤回は口頭ではなく、書面または電磁的記録で行う必要があります。
分からなかった点・気になった点
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