損害保険
実損てん補の原則と保険金額・保険価額の関係を土台に、火災・地震・自動車・傷害・賠償責任の各保険の補償範囲と、地震保険料控除などの税務を判断できるようになります。
ねらい
物と賠償のリスクに備える損害保険を学びます。このレッスンを終えると、実損てん補という損害保険に固有の原則が分かり、火災保険・地震保険・自動車保険・傷害保険・賠償責任保険のそれぞれについて、何が補償され何が補償されないかを判断できるようになります。
ストーリー
持ち家に住む長谷川さんは、火災保険の更新の案内を受け取り、あらためて補償の中身を確かめることにしました。「地震で家が壊れたら、この火災保険で守られるのか。家族が自転車で人にけがをさせたら。旅行中のけがは」。損害保険は、商品ごとに補償の範囲が細かく決まっています。「入っているから大丈夫」ではなく、何がどこまで補償されるかを読み解く力が必要です。
損害保険の仕組み
生命保険が「あらかじめ決めた金額」を支払う定額払いであるのに対し、損害保険は実際に生じた損害の額を限度に支払う実損てん補が原則です。保険で利益を得ることは認められないという利得禁止の考え方が土台にあります。
実損てん補を支える2つの用語を区別します。保険の対象の評価額を「保険価額(ほけんかがく)」、契約で決めた支払いの上限を「保険金額」といいます。保険金額と保険価額が等しい契約を全部保険、保険金額が下回る契約を一部保険、上回る契約を超過保険といいます。一部保険では、保険金額と保険価額の割合に応じて保険金が削られる比例てん補が適用されます。
計算例で確かめましょう。保険価額2,000万円の建物に、保険金額1,500万円の火災保険(一部保険)を契約していたとします。損害額が800万円のとき、比例てん補では保険金額と保険価額の割合(1,500万円÷2,000万円=0.75)を損害額に掛けます。支払われる保険金は、800万円×0.75で600万円です。全部保険であれば同じ損害額800万円がそのまま支払われるのに対し、一部保険では割合の分だけ保険金が削られる点を確認しましょう。
損害保険の保険料も、大数の法則と収支相等の原則にもとづき、給付と反対給付が釣り合うように(リスクの高さに応じて)決められます。
火災保険と地震保険
火災保険
火災保険は、建物と家財を対象に、火災・落雷・破裂爆発・風災などによる損害を補償します。補償範囲の広い商品では、水災や盗難、日常の破損汚損まで対象にできます。ここで最も重要な点は、地震・噴火・津波を原因とする損害は、火災保険では補償されないことです。地震による火災も同様です。
地震保険
地震・噴火・津波による損害に備えるには、地震保険が必要です。地震保険には、次の特徴があります。
- 単独では契約できず、火災保険に付帯して契約します。すでに火災保険を契約していれば、期間の途中からでも付帯できます。
- 対象は居住用の建物と家財です。1個または1組の価額が30万円を超える貴金属や、通貨・有価証券・自動車は対象になりません。
- 保険金額は、主契約である火災保険の保険金額の30%から50%の範囲で設定します。上限は建物5,000万円・家財1,000万円です。
- 保険料は、建物の構造と所在地で決まり、どの保険会社で契約しても同一です。割引制度は、免震建築物割引(50%)、耐震等級割引(等級3は50%・等級2は30%・等級1は10%)、耐震診断割引(10%)、建築年割引(10%)の4種類で、重複しては適用できません。
- 損害の程度を4区分で認定し、区分に応じた割合の保険金を支払います。**全損は保険金額の100%、大半損は60%、小半損は30%、一部損は5%**で、いずれも時価が限度です。
政府が再保険で支払いを支える官民一体の制度であることも、地震保険の特徴です。
ポイント
地震保険は単独では契約できず、火災保険に付帯します。保険金額は主契約の火災保険金額の30%から50%の範囲で、上限は建物5,000万円・家財1,000万円です。保険料は建物の構造と所在地で決まり、どの保険会社で契約しても同一である点が繰り返し問われます。
自動車保険
自動車の保険は、法律で加入が義務づけられた自賠責保険(じばいせきほけん)と、任意加入の自動車保険の二階建てです。
自賠責保険が補償するのは、対人賠償(他人を死傷させた場合の賠償)だけです。物の損害や運転者自身のけがは対象外です。支払限度額は被害者1人ごとに定められており、傷害による損害は120万円、死亡による損害は3,000万円、後遺障害による損害は程度に応じて75万円から4,000万円です。4,000万円は、常時介護を要する最も重い後遺障害(第1級)の場合の限度額です。
任意の自動車保険は、自賠責で足りない部分を補います。他人への賠償を補う対人賠償保険と対物賠償保険(いずれも自分の家族への賠償は対象外)、搭乗中の人のけがを補う人身傷害保険や搭乗者傷害保険、自分の車の損害を補う車両保険で構成されます。人身傷害保険は、自分の過失部分を含めて実際の損害額が支払われる点が特徴です。
傷害保険
傷害保険は、急激かつ偶然な外来の事故によるけがを補償します。この3要件を満たさないもの、たとえば病気や、靴ずれのような緩やかな障害は対象外です。
| 商品 | 補償の範囲 | 注意点 |
|---|---|---|
| 普通傷害保険 | 国内外を問わず、家庭内・職場・旅行中のけが | 細菌性食中毒・地震によるけがは原則対象外 |
| 国内旅行傷害保険 | 国内旅行中(自宅を出てから帰るまで)のけが | 細菌性食中毒は対象。地震によるけがは原則対象外 |
| 海外旅行保険 | 海外旅行中(自宅を出てから帰るまで)のけがなど | 細菌性食中毒も地震によるけがも対象 |
注意
細菌性食中毒と地震によるけがの扱いは、商品で異なります。普通傷害保険はどちらも原則対象外、国内旅行傷害保険は食中毒のみ対象、海外旅行保険は両方対象という違いが、試験で繰り返し問われます。
家族全員を対象にする家族傷害保険では、保険料は被保険者の人数に関係なく決まり、契約後に生まれた子も自動的に被保険者になります。
賠償責任保険と企業向けの保険
賠償責任保険は、偶然の事故で他人の身体や財物に損害を与え、法律上の損害賠償責任を負った場合に備える保険です。
- 個人賠償責任保険: 日常生活の賠償事故(自転車で歩行者にけがをさせた、飼い犬が人をかんだ、買い物中に商品を壊したなど)を補償します。業務中の事故と自動車事故は対象外です。家族も被保険者に含まれます。
- 生産物賠償責任保険(PL保険): 製造・販売した製品や提供した仕事の結果が原因の賠償に備えます。飲食店の食中毒などが典型です。
- 施設所有(管理)者賠償責任保険: 施設の欠陥や管理の不備、施設内の業務活動による賠償に備えます。
- 受託者賠償責任保険: 預かった他人の物を壊した・なくしたことによる賠償に備えます。
企業向けにはこのほか、休業による利益の減少に備える企業費用・利益保険、従業員の労災の上乗せ補償を行う労働災害総合保険などがあります。
損害保険と税金
個人契約の損害保険では、次の点を押さえます。
- 地震保険料控除: 支払った地震保険料は、所得税で最高5万円(支払額が5万円以下なら全額)、住民税で最高2万5,000円の所得控除の対象になります。火災保険の保険料は控除の対象外です。
- 受け取った保険金: 損害をてん補する保険金(火災保険金・車両保険金など)は、非課税です。他人から受け取る損害賠償金も同様に非課税です。
- 傷害保険などの死亡保険金: 生命保険と同じく、契約者・被保険者・受取人の組合せで相続税・所得税・贈与税のいずれかの対象になります。
法人契約の損害保険料は、原則として支払時に損金になります。積立型の保険は、積立部分を資産に計上します。
例題
次の記述が適切か、不適切かを考えてみましょう。
住宅を対象とする火災保険では、地震を原因とする火災によって建物が焼失した場合も、火災による損害であるため保険金の支払い対象となる。
答え合わせ
不適切です。地震・噴火・津波を原因とする損害は、それが火災という形で生じたとしても、火災保険では補償されません。地震による火災に備えるには、火災保険に地震保険を付帯する必要があります。「火災という結果」ではなく「地震という原因」で判断されることが、この論点で最も間違えやすい点です。
応用
もう一問、傷害保険の補償範囲を考えてみましょう。
Aさんは普通傷害保険に加入している。次の2つのケースのうち、保険金の支払い対象となるのはどちらか。1つ目は、休日に自宅の階段で転倒して骨折したケース。2つ目は、飲食店での食事が原因の細菌性食中毒で入院したケース。
答え合わせ
支払い対象となるのは1つ目の骨折のケースです。普通傷害保険は、急激かつ偶然な外来の事故によるけがについて、国内外・家庭内・業務中を問わず補償します。階段からの転倒による骨折はこの3要件を満たします。一方、細菌性食中毒は普通傷害保険では原則として対象外です。食中毒が対象になるのは国内旅行傷害保険や海外旅行保険であり、商品ごとの対象の違いを整理して覚えることが判断の軸になります。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 退院後の再入院を1回の入院と数えるルールの判定解く
- リビング・ニーズ特約で生前給付を受けられる余命期間の選択解く
- 遺族の支出と収入の見込みからの必要保障額の計算解く
- 福利厚生プランで損金にできる保険料の割合の選択解く
- 保険への加入があてはまるリスク対処手法の選択解く