保険制度全般
保険業法と保険法の役割の違い、クーリング・オフや保険契約者保護機構などの契約者保護の仕組み、共済と少額短期保険の特徴を判断できるようになります。
ねらい
民間保険の制度の土台と、契約者を守る仕組みを学びます。このレッスンを終えると、保険業法と保険法という2つの法律の役割の違いが分かり、クーリング・オフ、ソルベンシー・マージン比率、保険契約者保護機構、少額短期保険といった契約者保護の論点を判断できるようになります。
ストーリー
保険の見直しを考えている西村さんは、営業職員のすすめで生命保険を申し込みました。しかし帰宅して家族と話すうち、「本当に必要だったのか」と迷いが生じました。「申し込んでしまった契約は、もう取り消せないのだろうか」。また、ニュースで昔あった保険会社の破綻の話を知り、「もし保険会社がつぶれたら、保険金はどうなるのか」も気になっています。保険の制度には、こうした不安に応える仕組みが組み込まれています。
社会保険と民間保険
保険には、国が運営する社会保険と、保険会社が運営する民間保険があります。社会保険は加入が法律で定められた強制加入で、所得の再分配の機能を持ちます。民間保険は任意加入で、社会保険でまかなえない部分を上乗せして補完する役割を担います。必要な保障を考えるときは、まず社会保険で何がどこまで給付されるかを確かめ、足りない部分を民間保険で埋める順序で設計します。
保険業法と保険法
保険の世界には、名前の似た2つの法律があります。役割がまったく異なるため、区別して押さえます。
- 保険業法: 保険会社と保険募集を監督する法律です。保険業の免許、募集人の登録、禁止行為(虚偽の説明、不利益事実を告げない乗換え募集、保険料の割引や立替えといった特別利益の提供など)、クーリング・オフなどを定めます。
- 保険法: 保険契約のルールを定める法律です。契約当事者の権利義務、告知義務、保険給付の履行期などを定めます。契約者に不利な特約を無効とする片面的強行規定という考え方が採られており、共済契約にも適用されます。
ポイント
クーリング・オフは会社と募集を監督する保険業法が定めるルールで、保険法ではありません。「業法は監督、保険法は契約ルール」という軸で、どちらの法律の話かを見分けましょう。
契約者保護に関する制度
クーリング・オフ
保険契約の申込者は、クーリング・オフに関する書面を受け取った日と申込日のいずれか遅い日から8日以内であれば、書面または電磁的記録により申込みの撤回ができます。ただし、保険期間1年以内の契約、法人が結んだ契約、医師の診査を受けた後などは、クーリング・オフができません。
ソルベンシー・マージン比率
ソルベンシー・マージン比率は、大災害や株価の暴落など、通常の予測を超えるリスクに対する保険会社の支払余力を示す指標です。200%を下回ると、金融庁による早期是正措置の対象になります。200%以上であることが健全性のひとつの目安ですが、比率の高さだけで会社の優劣が決まるものではありません。
保険契約者保護機構
保険会社が破綻した場合に契約者を保護する仕組みが、保険契約者保護機構です。生命保険契約者保護機構と損害保険契約者保護機構があり、国内で営業する保険会社は原則として加入を義務づけられています。
- 生命保険: 破綻時点の**責任準備金等の原則90%**まで補償されます。保険金額の90%ではない点に注意が必要です。高予定利率の契約では補償割合がさらに引き下げられることがあります。
- 損害保険: 契約の種類で扱いが分かれます。自賠責保険と地震保険は補償割合100%です。自動車保険・火災保険・その他の損害保険(個人・小規模法人等の契約)は、破綻後3か月間に生じた事故の保険金は全額(100%)支払われ、3か月経過後は補償割合80%になります。傷害・疾病に関する保険などの第三分野は補償割合90%です。
なお、少額短期保険業者と共済は、保険契約者保護機構の対象外です。
注意
生命保険の補償は「責任準備金等の原則90%」です。責任準備金とは、将来の保険金の支払いに備えて保険会社が積み立てるお金のことで、受け取れる保険金の90%が約束されるという意味ではありません。破綻後は保険金額や予定利率が引き下げられることがあります。
共済と少額短期保険
共済は、農協や生協などの組合が組合員向けに行う保障の仕組みで、根拠となる法律と監督官庁が保険会社と異なります。少額短期保険業者は、保険金額が少額で保険期間の短い保険だけを引き受ける事業者です。保険期間は生命保険・医療保険で1年以内、損害保険で2年以内に限られ、被保険者1人あたりの保険金額の総額には上限が定められています。
| 区分 | 主な特徴 | 保険契約者保護機構 |
|---|---|---|
| 保険会社 | 保険業法で免許を受けて保険業を営む | 原則加入(対象) |
| 共済 | 根拠となる法律と監督官庁が保険会社と異なる | 対象外 |
| 少額短期保険業者 | 保険期間は生命・医療1年以内/損害2年以内 | 対象外 |
少額短期保険業者が引き受ける保険金額には上限があり、1人の被保険者について引き受けるすべての保険契約の保険金額の合計は1,000万円が上限です。加えて、死亡保険・医療保険・損害保険といった保険の区分ごとにも、それぞれ上限額が定められています。
募集の形態
保険の募集は、保険会社のために募集を行う保険募集人(営業職員・保険代理店)と、契約者と保険会社の間に立って中立の立場で契約の媒介を行う保険仲立人(ほけんなかだちにん。ブローカー)が担います。いずれも登録が必要です。銀行の窓口でも保険を販売できますが、融資先への販売の制限など弊害防止のルールが設けられています。
保険マーケットの動向
保障の担い手は多様化しています。インターネット専業の保険会社、保険ショップのような来店型代理店、少額短期保険業者の参入により、加入の経路と商品の選択肢が広がりました。比較して選べるようになった一方で、自分に必要な保障を見極める力がいっそう求められています。
例題
次の記述が適切か、不適切かを考えてみましょう。
生命保険会社が破綻した場合、生命保険契約者保護機構により、破綻時点の保険金額の90%が補償される。
答え合わせ
不適切です。生命保険契約者保護機構が補償するのは、保険金額の90%ではなく、**責任準備金等の原則90%**です。責任準備金は将来の保険金支払いに備えた積立金であり、破綻後は保険金額そのものや予定利率が引き下げられることがあります。「何の90%か」を正確に押さえることが、この論点の判断の軸です。
応用
もう一問、クーリング・オフの可否を考えてみましょう。
Aさんは、保険期間10年の生命保険を申し込み、その日にクーリング・オフに関する書面を受け取った。申込日から6日後に気が変わった場合、Aさんはこの申込みを撤回できるか。
答え合わせ
撤回できます。クーリング・オフは、クーリング・オフに関する書面を受け取った日と申込日のいずれか遅い日から8日以内であれば、書面または電磁的記録で行えます。Aさんは申込日に書面を受け取っているので、起算日は申込日となり、6日後はまだ期間内です。なお、保険期間1年以内の契約や、医師の診査を受けた後の場合などはクーリング・オフができません。期間の数え方と、できない場合の例外をセットで覚えましょう。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 退院後の再入院を1回の入院と数えるルールの判定解く
- リビング・ニーズ特約で生前給付を受けられる余命期間の選択解く
- 遺族の支出と収入の見込みからの必要保障額の計算解く
- 福利厚生プランで損金にできる保険料の割合の選択解く
- 保険への加入があてはまるリスク対処手法の選択解く