技術開発戦略の立案
MOT(技術経営)とオープンイノベーション、魔の川・死の谷・ダーウィンの海という3つの関門、PoC・PoVなど技術開発戦略立案の考え方を理解できるようになります。
ねらい
技術を事業の成功につなげる戦略を学びます。このレッスンを終えると、MOT(技術経営)の考え方と、技術が製品になり利益を生むまでに越えるべき関門、戦略立案で使われる手法を説明できるようになります。
ストーリー
画期的な新素材を開発した研究所がありました。しかし製品化する資金がなく、量産にも失敗し、ようやく市場に出た頃には競合品が普及していました。優れた技術が、そのまま事業の成功になるわけではありません。技術と市場ニーズを結び付けて事業を成功へ導く。それが技術開発戦略です。
MOTとイノベーションの促進
企業の持続的発展のためには、技術開発への投資とともにイノベーションを促進することが重要です。技術を経営の視点で管理する考え方をMOT(Management of Technology:技術経営)と呼びます。
イノベーションを促進する考え方には次のものがあります。
- オープンイノベーションは、自社だけでなく外部の技術やアイディアを取り込んで革新を起こす考え方です。
- イノベーションのジレンマは、優良企業が既存製品の改良に集中するあまり、破壊的な技術革新に乗り遅れる現象です。
- リーンスタートアップは、最小限の製品を早く作って市場の反応から学び、方向転換を繰り返す起業・開発の手法です。
- APIエコノミーは、自社の機能をAPIとして公開し、他社のサービスと連携して価値を広げる経済圏です。
研究開発(R&D)への投資を支える存在として、ベンチャー企業に投資するVC(ベンチャーキャピタル)や、事業会社が自ら投資するCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)があります。
価値創出の三要素と3つの関門
技術開発を経済的価値へ結び付けるには、技術・製品価値創造(Value Creation)、価値実現(Value Delivery)、価値利益化(Value Capture)の3つが重要です。そして、研究から事業化までの道のりには、乗り越えるべき関門があるとされます。
| 関門 | 位置 | 内容 |
|---|---|---|
| 魔の川 | 研究と開発の間 | 研究成果を製品開発につなげられない |
| 死の谷 | 開発と事業化の間 | 資金や人材が尽きて製品化・量産化に至らない |
| ダーウィンの海 | 事業化と産業化の間 | 市場での競争に勝てず淘汰される |
3つの関門は、研究→開発→事業化→産業化という一本の道のりの途中に順番に現れます。
冒頭の研究所は、死の谷とダーウィンの海でつまずいた例です。また、新製品が初期の愛好者から一般の多数派に普及する際の断絶をキャズムと呼びます。
技術開発戦略の立案
戦略の立案では、製品動向・技術動向を分析し、核となるコア技術を見極め、柔軟に外部資源を活用します。具体的な手段として、委託研究や共同研究、技術獲得・技術供与・技術提携、大学や行政と連携する産学官連携、自社技術を標準にする標準化戦略があります。発想の段階では、デザイン思考やペルソナ法、アイディアを競うアイディアソン、短期間で試作を作るハッカソンが使われます。本格投資の前に、概念の実現可能性を検証するPoC(概念実証)と、ビジネスとしての価値を検証するPoV(価値実証)を行うことも重要です。
こうして立案した戦略は、具体的な投資・人材の計画やロードマップに落とし込みます。その工程は次のレッスンで扱います。
例題
次の問いに答えてください。
問1 自社の技術やアイディアだけに頼らず、外部の技術・知識を積極的に取り込んでイノベーションを起こす考え方を何といいますか。
問2 研究開発の成果が事業化に至る過程で、資金や人材が尽きて製品化にたどり着けない状況を表す言葉は何ですか。
解答と解説
問1の答えはオープンイノベーションです。組織の壁を越えて知識を組み合わせることで、自前主義の限界を越えます。
問2の答えは死の谷(Valley of Death)です。研究と開発の間の魔の川、事業化後の競争であるダーウィンの海とあわせて覚えましょう。
応用
本試験を意識した問題を解いてみましょう。
問 新しい技術やサービスについて、本格的な投資の前に、それが技術的に実現できるかを小規模に検証する取組はどれでしょうか。次の中から選んでください。
- PoC
- PoV
- ハッカソン
- パイロット生産
解答と解説
答えは1のPoC(Proof of Concept:概念実証)です。アイディアや技術が実際に機能するかどうかを小規模な実験で確かめます。2のPoV(Proof of Value:価値実証)は、技術的な実現性ではなく、ビジネスとしての価値・効果があるかを検証する取組です。3のハッカソンは、短期間に集中して試作品の開発を競うイベントであり、投資判断のための体系的な検証ではありません。4のパイロット生産は、量産開始の前に試験的に生産して製造工程を確認する活動で、技術の概念そのものの検証とは段階が異なります。
分からなかった点・気になった点
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