計測・制御に関する理論
信号処理とA/D変換、フィードバック制御などの制御の仕組み、センサーとアクチュエーターの種類と役割を理解できるようになります。
ねらい
コンピュータが現実世界を測り、機械を動かす仕組みを学びます。このレッスンを終えると、信号処理とA/D変換の役割、フィードバック制御とフィードフォワード制御の違い、代表的なセンサーとアクチュエーターの働きを説明できるようになります。
ストーリー
あなたの部屋のエアコンは、設定温度を28度にしておくと、暑くなれば強く冷やし、冷えすぎれば弱めてくれます。誰かがつきっきりで調整しているわけではありません。温度を測るセンサー、判断するコンピュータ、風を送るモーターが連携して、部屋を一定の状態に保っています。この「測って、判断して、動かす」という一巡りが、このレッスンの主役である制御です。
信号処理:現実世界の波を整える
温度や音のような現実世界の情報は、連続的に変化するアナログの波です。コンピュータで扱うには、前のレッスンでも登場したA/D変換でデジタルデータに変換します。逆に、コンピュータの計算結果で機械を動かすときは、D/A変換でデジタルをアナログの信号に戻します。
現実世界の波には雑音がまじります。そこで、必要な成分だけを取り出して雑音を除去する処理を行います。これをフィルタリングといい、波形から特徴を取り出す信号処理の基本になっています。
制御の仕組み:測って、比べて、調整する
フィードバック制御
エアコンの例のように、制御対象の状態を測定し、目標値と比較して、その差を打ち消すように操作量を調整し続ける方式をフィードバック制御といいます。結果を見てから直すため、外から乱れが入っても最終的に目標値へ近づけられるのが強みです。
フィードフォワード制御とオープンループ
フィードフォワード制御は、結果に影響を与える乱れを事前に検出して、影響が出る前に先回りして調整する方式です。たとえば、窓から日差しが入り始めたことを検知して、室温が上がる前に冷房を強めるという考え方です。
一方、結果を確認せずに、あらかじめ決めた手順どおりに動かすだけの方式をオープンループといいます。仕組みは単純ですが、乱れがあっても修正は働きません。
制御の良し悪しは、目標値の変化にどれだけ速く追従できるかという応答特性と、振動したり暴走したりせずに落ち着くかという制御安定性で評価します。また、機器の制御では「決められた時間内に必ず処理を終える」ことが求められるため、応答時間を保証するリアルタイムOSが使われます。
センサーとアクチュエーター:機械の感覚と筋肉
コンピュータ制御は、センサーで状態を検出し、コンピュータが判断し、アクチュエーターで機械的な動作に変換するという流れで成り立っています。センサーが感覚器官、アクチュエーターが筋肉に当たります。
代表的なセンサー
| センサー | 検出するもの |
|---|---|
| 光学センサー、赤外線センサー | 光。人感検知や距離の測定にも使われる |
| 磁気センサー、ホール素子 | 磁気。位置や回転の検出に使われる |
| 加速度センサー | 加速度。スマートフォンの傾き検出にも使われる |
| ジャイロセンサー | 角速度。回転の速さや向きの変化を捉える |
| 超音波センサー | 音波の反射。距離の測定に使われる |
| 温度センサー、サーミスタ | 温度。サーミスタは温度で電気抵抗が変わる素子 |
| 湿度センサー | 湿度 |
| 圧力センサー、ひずみゲージ | 圧力や力。ひずみゲージは変形を電気抵抗の変化として捉える |
代表的なアクチュエーター
アクチュエーターは、電気の指示を実際の動きに変える装置です。電気で回転や直線運動を生むモーター、油の圧力で大きな力を出す油圧シリンダ、空気の圧力で動く空気圧シリンダが代表です。
例題
次の問いに答えてください。
問1 スマートフォンの画面の向きの自動回転のために、本体の傾きを検出したいとき、主に使われるセンサーは何ですか。
問2 コンピュータのデジタルデータをアナログ信号に変換する処理を何といいますか。
解答と解説
問1の答えは加速度センサーです。重力による加速度の向きを捉えることで、本体がどちらに傾いているかを検出できます。
問2の答えはD/A変換です。逆に、アナログ信号をデジタルデータに変換する処理はA/D変換です。変換の向きを取り違えないようにしましょう。
応用
本試験を意識した問題を解いてみましょう。
問 制御対象の出力を測定して目標値と比較し、その差を打ち消すように操作量を調整し続ける制御方式はどれでしょうか。次の中から選んでください。
- フィードバック制御
- フィードフォワード制御
- オープンループ
- フィルタリング
解答と解説
答えは1のフィードバック制御です。出力の測定結果を入力側へ戻し、目標値との差をなくすように調整を繰り返すのがフィードバック制御の特徴です。2のフィードフォワード制御は、出力ではなく乱れの原因を事前に検出して先回りする方式なので、「出力を測定して比較する」という本問の説明には当てはまりません。3のオープンループは結果を確認せずに動かす方式であり、測定も比較も行いません。4のフィルタリングは信号から雑音を除去する信号処理であり、制御方式ではありません。
分からなかった点・気になった点
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