応用数学
順列・組合せと確率、代表値やばらつきなどの統計、行列と数列、グラフ理論や待ち行列理論のあらましを理解できるようになります。
ねらい
システムの性能予測やデータ分析の土台になる数学を学びます。このレッスンを終えると、順列・組合せと確率の基本計算ができ、平均値や標準偏差などの統計の言葉を正しく使い分け、グラフ理論や待ち行列理論が何を扱う道具なのかを説明できるようになります。
ストーリー
あなたのチームは、問い合わせ窓口のシステムを運用しています。ある日、上司から「窓口の混み具合を予測して、待ち時間を見積もってほしい」と頼まれました。利用者がいつ来るかは偶然に左右されます。偶然が絡む出来事を扱うには、確率と統計の考え方が必要です。さらに、待ち時間の見積もりには待ち行列理論という専用の道具があります。順番に見ていきましょう。
順列・組合せと確率
場合の数:並べるか、選ぶだけか
起こりうるパターンの総数を場合の数といいます。数え方は2つを区別します。
- 順列は、順序を区別して並べる数え方です。5人から2人を選んで委員長と副委員長を決めるなら、委員長の選び方が5通り、そのそれぞれに副委員長の選び方が4通りあるので、5かける4で20通りです。
- 組合せは、順序を区別せずに選ぶだけの数え方です。5人から代表2人を選ぶだけなら、順列の20通りには同じ2人の並べ替えが2通りずつ含まれているので、20を2で割って10通りです。
なお、1からnまでの整数をすべて掛け合わせた数を階乗といい、並べ方の計算の基本になります。
確率の基本
確率は、起こりやすさを0から1までの数で表したものです。どの目も同じ確からしさで出るサイコロで偶数の目が出る確率は、6通りのうち2、4、6の3通りが当てはまるので、6分の3、つまり2分の1です。
2つの出来事を組み合わせるときの基本定理が2つあります。
- 加法定理は「AまたはBが起こる確率」を求める定理です。AとBが同時に起こらない(排反である)場合、それぞれの確率を足し合わせて求めます。
- 乗法定理は「AとBがともに起こる確率」を求める定理です。互いに影響しない出来事なら、それぞれの確率を掛け合わせて求めます。
「Aが起こったとわかっている条件のもとでBが起こる確率」を条件付き確率といいます。また、結果から原因の確率をさかのぼって求める定理をベイズの定理といい、迷惑メールの判定などに応用されています。確率の分布には、二項分布や正規分布などの型があり、正規分布は平均値を中心にした左右対称の釣り鐘型の分布です。
統計:データの姿を数で要約する
代表値とばらつき
データ全体の姿をひとつの数で代表させる値を代表値といいます。
| 代表値 | 意味 |
|---|---|
| 平均値 | すべての値を足してデータの個数で割った値 |
| 中央値(メジアン) | 値を小さい順に並べたとき、ちょうど真ん中にくる値 |
| 最頻値(モード) | 最も多く現れる値 |
たとえばデータが2、3、3、4、8の5個なら、平均値は4、中央値は3、最頻値は3です。極端に大きい値がまじると平均値は引きずられますが、中央値は動きにくいという性質があります。
データの散らばり具合は、分散と標準偏差で表します。分散は「各値と平均値の差」を2乗して平均した値で、標準偏差は分散の正の平方根です。標準偏差が大きいほど、データは平均値から広く散らばっています。
相関と回帰
2種類のデータの関係の強さを表す指標が相関係数で、マイナス1から1までの値をとります。1に近いほど「一方が増えるともう一方も増える」正の相関が強く、マイナス1に近いほど負の相関が強く、0に近いと直線的な関係はほぼありません。
一方のデータからもう一方を予測する式を求める手法を回帰分析といい、予測に使う変数を説明変数、予測したい変数を目的変数と呼びます。注意したいのは、相関があることと因果があることは別だという点です。アイスクリームの売上と水難事故の件数に相関があっても、原因は共通の第三の要因(夏の暑さ)かもしれません。このような見かけの相関を擬似相関といいます。
数値計算と数値解析
行列やベクトルを扱う数学を線形代数といい、3Dグラフィックスや機械学習の計算の土台になっています。行列は数を縦横に並べたもので、掛けても相手を変えない単位行列、掛け合わせると単位行列になる逆行列などの言葉を押さえておきましょう。数列では、一定の数を足していく等差数列、一定の数を掛けていく等比数列、直前の2項の和が次の項になるフィボナッチ数列が代表的です。
方程式の解を式変形では求められないとき、近似解を数値的に求める手法が数値解析です。解を含む区間を半分ずつ狭めていく二分法、接線を使って解に近づいていくニュートン法が代表的です。近似には誤差がつきものなので、真の値との差そのものを表す絶対誤差と、真の値に対する割合で表す相対誤差を区別します。
グラフ理論と待ち行列理論
グラフ理論:つながりを図にする
グラフ理論でいうグラフは、棒グラフのことではなく、点と点を線で結んだ「つながりの図」です。駅と路線、コンピュータどうしの接続、ウェブページのリンクなどを表せます。線に向きがないものを無向グラフ、向きがあるものを有向グラフといいます。最短経路問題のように、グラフの上で最も効率のよい道筋を探す問題が典型です。
待ち行列理論:混み具合と待ち時間を見積もる
冒頭のストーリーの「待ち時間の見積もり」に使うのが待ち行列理論です。利用者がやってくる間隔(到着間隔)と、1人あたりの処理にかかる時間(サービス時間)がどちらも偶然に揺らぐとき、行列がどれだけ伸びるかを計算します。基本のモデルはM/M/1モデルと呼ばれ、窓口が1つの場合を扱います。
単位時間あたりに到着する人数の平均を平均到着率、処理できる人数の平均を平均サービス率といいます。平均到着率を平均サービス率で割った値が窓口の利用率で、利用率が1に近づくほど待ち時間は急激に長くなります。
最適化問題
限られた資源の中で最も良い結果を探す問題を最適化問題といいます。条件を満たす範囲で目的の値を最大・最小にする線形計画法、作業の順序関係から日程を管理するPERT、部分問題の答えを積み上げて全体の答えを得る動的計画法などの手法があります。
例題
次の問いに答えてください。
問1 6人のメンバーから2人の代表を選ぶ組合せは何通りありますか。
問2 データ1、2、4、5、8の平均値と中央値を求めてください。
解答と解説
問1の答えは15通りです。順序を区別して並べると6かける5で30通りですが、代表を選ぶだけなら同じ2人の並べ替え2通りを区別しないので、30を2で割って15通りになります。
問2について、平均値は1と2と4と5と8を足した20を5で割って4です。中央値は小さい順に並べたときの真ん中、3番めの値なので4です。
応用
本試験を意識した問題を解いてみましょう。
問 窓口が1つの問い合わせカウンターに、利用者が1時間あたり平均6人到着します。窓口は1時間あたり平均10人を処理できます。M/M/1モデルにおけるこの窓口の利用率はいくつでしょうか。次の中から選んでください。
- 0.4
- 0.6
- 1.5
- 1.67
解答と解説
答えは2の0.6です。利用率は、平均到着率を平均サービス率で割って求めます。1時間あたりの到着が平均6人、処理能力が平均10人なので、6を10で割って0.6になります。1の0.4は、利用率ではなく窓口が空いている割合に当たる値です。3の1.5と4の1.67は、割る向きを逆にした誤りで、利用率が1を超えると行列は処理しきれずに伸び続けてしまうため、安定した窓口の利用率としてあり得ません。
分からなかった点・気になった点
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