仲介貿易・外国間等技術取引の「おそれ」の定義
仲介貿易取引・外国間等技術取引で2から16までの項の貨物・技術が許可の対象になる「おそれがある場合」を、条文に即して判定できるようになります。通常の輸出のキャッチオール規制(用途要件・需要者要件・インフォーム要件)との違いも押さえます。
この節で学ぶこと
- 仲介貿易取引・外国間等技術取引で「おそれがある場合」がどう定義されるかを、条文の言葉で説明できるようになります。
- 通常の輸出のキャッチオール規制(用途要件・需要者要件・インフォーム要件)と、この「おそれ」の定義の違いを判断できるようになります。
覚えること
- 前節までで、2から16までの項の貨物・技術は、船積地域と仕向地の両方がグループA以外であり、かつ「おそれ」があるときに許可が必要になると学びました。この「おそれ」の中身を定めるのが仲介貿易おそれ省令(貨物側)と技術仲介おそれ告示(技術側)です。
- 仲介貿易おそれ省令(外為令第17条第5項第2号イの委任)が定める「おそれがある場合」は、次の2つのどちらかです。
- 取引の契約書、または居住者が入手した文書・図画・電磁的記録に、当該貨物が核兵器等の開発等(または核兵器等開発等省令別表に掲げる行為)に用いられる旨が記載・記録されているとき。
- 居住者が、取引の相手方となる非居住者・需要者・その代理人から、その旨の連絡を受けたとき。
- 技術仲介おそれ告示(貿易外省令第9条第2項第六号イの委任)は、技術の外国間提供について、同じ構造の「おそれ」を定めます。届く先が貨物か技術かが違うだけで、判定の骨組みは共通です。
- 経済産業大臣からのインフォームは、この2つの入り口に含まれません。通常の輸出のキャッチオール規制(第9章)には、大臣からの通知という第3の入り口がありますが、仲介貿易・外国間等技術取引の「おそれ」は、文書での記載・記録と取引の相手方からの連絡の2つだけです。
- 仲介貿易運用通達(外為法第25条第4項の運用について)は、この判定を行ううえでの実務上の確認事項・様式を定める通達です。条文だけでは読み取れない実務の手順は、この通達で補います。
1. なぜ入り口が2つしかないのか
通常の輸出のキャッチオール規制は、経済産業大臣が個別に把握した懸念を、インフォーム(許可申請すべき旨の通知)という形で輸出者に直接伝えられます。国内の輸出者は、大臣の監督が直接届く相手だからです。
仲介貿易取引・外国間等技術取引は、貨物や技術そのものが本邦を通らず、取引の当事者(外国のY社・Z社)も外国にいます。大臣が取引の実態を個別に把握して通知する手立ては、通常の輸出より乏しくなります。そのため、おそれの定義は居住者自身が持つ情報(文書)と取引の相手方が伝えてくる情報(連絡)の2つに絞られています。取引を仕切る居住者が、自分の手元にある情報にどれだけ注意を払うかが、この規制の実効性を左右します。
2. 判断の手順
- 貨物・技術の該非判定を行い、1の項か、2から16までの項かを特定します(1の項は無条件で許可が必要です)。
- 2から16までの項なら、船積地域と仕向地(技術は提供地と提供先)の両方がグループA以外かを確かめます。
- 契約書や入手した文書・図画・電磁的記録に、核兵器等の開発等に用いられる旨の記載・記録があるかを確認します。
- 記載・記録が無くても、取引の相手方となる非居住者・需要者・その代理人から、その旨の連絡を受けていないかを確認します。
- 3・4のいずれかに該当すれば「おそれがある場合」にあたり、許可の対象になります。実務上の確認手順は仲介貿易運用通達で補います。
3. 注意すべきこと
試験で気をつける点
- 「経済産業大臣からインフォームを受けていないので、仲介貿易取引に許可は不要」という記述は、文書の記載・相手方からの連絡という別の入り口を見落としています。インフォームが無いことは、おそれが無いことを意味しません。
- 「相手方から明確に言われない限り、おそれは無い」という記述も誤りです。自分が入手した文書・図画・電磁的記録に記載されている場合も、独立した入り口です。
- 貨物側(仲介貿易おそれ省令)と技術側(技術仲介おそれ告示)の根拠条文(外為令の省令か、貿易外省令の告示か)の取り違えに注意します。
実務で気をつける点
- 三国間取引の商談記録・電子メール・仕様書のやり取りに、核兵器等の開発等をうかがわせる記述が無いかを確認する体制が要ります。文書は取引の後からでは確認できないため、商流を組む段階での確認が実務の核心です。
4. 根拠法令
- 外為令第17条第5項第2号イ。仲介貿易取引で許可が必要になる「おそれがある場合」の定めを、経済産業省令(仲介貿易おそれ省令)へ委任します。
- 仲介貿易おそれ省令(平成18年経済産業省令第101号)本文。「契約書若しくは居住者が入手した文書、図画若しくは電磁的記録」への記載・記録、または「取引の相手方となる非居住者若しくは需要者若しくはこれらの代理人から連絡を受けたとき」の2つを定めます。条文はe-Gov法令検索で全文確認済みです。
- 貿易外省令第9条第2項第六号イ。技術の外国間提供で許可が必要になる「おそれがある場合」を、経済産業大臣が告示で定める形へ委任します(技術仲介おそれ告示)。告示本文の詳細確認はCISTEC「輸出管理用語集」の対応に拠っており、METI本文PDFでの原文照合は今後の課題です。
- 仲介貿易運用通達(外為法第25条第4項の規定に基づき許可を要する外国相互間の貨物の移動を伴う取引について)。実務上の確認事項・様式を定めますが、通達本文の詳細な条項番号は下書き段階のため要確認としています。
5. 理解度の確認
次の記述が正しいか、誤りかを判断してみましょう。
問1 仲介貿易取引で、経済産業大臣からインフォームを受けていない場合、おそれがある場合には該当しない。
答え: 誤りです。仲介貿易おそれ省令の「おそれがある場合」は、文書への記載・記録、または取引の相手方からの連絡の2つで定まります。経済産業大臣からのインフォームはこの規制の入り口に含まれません。
問2 居住者が、取引の相手方となる非居住者から、貨物が核兵器等の開発のために用いられる旨の連絡を受けた場合、それだけで「おそれがある場合」に該当しうる。
答え: 正しいです。契約書・入手した文書等への記載・記録が無くても、相手方からの連絡だけで「おそれがある場合」の要件を満たします。
問3 外国間等技術取引の「おそれ」の定義は、仲介貿易取引と全く別の省令が定めており、判定の構造にも共通点は無い。
答え: 誤りです。技術側は技術仲介おそれ告示(貿易外省令第9条第2項第六号イの委任)が定めますが、判定の構造(文書での記載・記録/相手方からの連絡の2つ)は貨物側と共通です。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 本邦にあるX社は、輸出令別表第1の1の項に該当する貨物を、A国のY社からB国のZ社へ売却する取引を仕切った。貨物は日本を通らない。A国もB国もグループAである。この取引には許可が必要である。解く
- 本邦にあるX社は、1の項に該当する貨物をA国のY社からB国のZ社へ売却する取引を仕切った。A国もB国もグループAなので、許可は不要である。解く
- 仲介貿易取引の規制の構造は、貨物の項番で2つに分かれる。解く
- 外国間等技術取引は、貨物の仲介貿易取引に対応する技術側の規制である。解く
- 外国間等技術取引の構造は、仲介貿易と並行しており、1の項が厳格、2から16までの項が条件付きである。解く