ITパスポート試験
きかいがくしゅう
機械学習
ML
Machine Learning
機械学習は、判断のための規則を人がすべて書き込む代わりに、データや経験からその規則をコンピュータ自身に見つけさせる技術です。学習に使ったデータをなぞるだけでなく、まだ見ていない新しいデータに対しても予測や判断ができるようにすることを目指します。
詳しい説明
規則を書く代わりにデータから学ばせる
機械学習(Machine Learning、略してML)は、コンピュータにデータや経験を与え、そこから判断の手がかりを自動で見つけさせる技術です。ふつうのプログラムでは、人が「この条件ならこう処理する」という手順をすべて書きます。機械学習では、人が書くのは学び方の枠組みまでで、具体的な判断の基準はデータから決まります。
迷惑メールの判定で考えてみます。人が規則を書く場合は、「件名に特定の言葉があれば迷惑メールとする」のような条件を1つずつ並べます。機械学習を使う場合は、迷惑メールと普通のメールの実例を大量に用意し、どのような特徴があれば迷惑メールらしいかをコンピュータに学ばせます。
学習の結果としてできあがり、入力を受け取って予測や判断を返す仕組みは、モデルと呼ばれます。学習に使うデータを訓練データと呼びます。機械学習の目的は、訓練データをうまく説明することそのものではありません。まだ見ていない新しいデータにも正しく対応できることが目的です。この未知のデータへの対応力を汎化性能と呼びます。
ルールベースの手法との違い
人が規則を書き、その規則に従ってコンピュータが推論する方法は、ルールベースの手法と呼ばれます。専門家の知識を「もしAならばB」という形の規則として大量に蓄えたエキスパートシステムは、その代表例です。
ルールベースの手法には、なぜその結論になったかを規則までさかのぼって説明できるという長所があります。一方で、規則を書くのは人なので、人がうまく言葉にできない判断は扱えません。例えば、手書きの数字を見分けるとき、人は一瞬で読めますが、「どの線がどう曲がっていれば3か」を漏れなく規則として書き出すのは困難です。例外が見つかるたびに規則を足していくと、規則どうしが矛盾したり、保守が追いつかなくなったりします。
機械学習は、この「規則を書き尽くす」作業をデータからの学習に置き換えます。そのため、人が言葉にしにくい判断でも、十分な実例があれば扱えるようになります。その代わり、学習に使えるデータが必要になり、データに含まれない状況では誤ることがあります。また、モデルがなぜその判断をしたのかは、ルールベースの手法ほど簡単には説明できないことがあります。
サミュエルのチェッカー研究
機械学習という言葉を題名に含む初期の研究に、アーサー・L・サミュエル(Arthur L. Samuel)が1959年に発表した論文「Some Studies in Machine Learning Using the Game of Checkers」があります。チェッカーは、盤の上で駒を動かして相手の駒を取り合う2人用のボードゲームです。
サミュエルはこの論文で、人間や動物が行えば学習の過程を含むと言われるような振る舞いを計算機にプログラムすることとして、機械学習の研究を説明しています。そして、題材にチェッカーを選んだ理由として、チェスより単純でありながら知的な活動の基本的な特徴を備えていること、手順が決まりきっておらず実際上は完全に解析し尽くせないこと、勝ち負けという明確な基準があること、規則がはっきりしていること、人間の熟達者と対戦できることを挙げています。
論文では、2つの学び方が試されました。1つは、対局の記録を保存しておき、それを後の対局で使うことで、先読みを実質的に深くする方法です。これはrote learningと呼ばれ、暗記による学習と訳せます。もう1つは、盤面の良し悪しを点数で表す評価の式を用意し、その式に含まれる係数を対局を通じて調整していく方法です。これはgeneralization learningと呼ばれ、一般化による学習と訳せます。後者では、どの特徴をどれだけ重く見るかという数値が、人の書き込みではなく対局の経験によって決まります。
サミュエルは結論として、プログラムを書いた本人よりも上手にチェッカーを指せるようになるまで、計算機に学習させられると述べています。そこに要した対局時間は8〜10時間でした。作った人は自分の強さを超える判断を直接書き込めません。それでも、経験から判断の基準を改善させれば作った人を上回りうることが、具体的な対局で示されました。
学び方の3つの型
機械学習は、学習のときにどのような手がかりを与えるかによって、大きく3つの型に分けて説明されます。
- 教師あり学習: 入力と、それに対応する正解の組を与えて学ばせます。迷惑メールかどうかを当てる分類や、数値を予想する回帰に使われます。
- 教師なし学習: 正解を与えず、データそのものの似かより方やまとまりを見つけさせます。似たデータをグループに分けるクラスタリングなどに使われます。
- 強化学習: 行動を試して得られる報酬を手がかりに、報酬が多くなる行動の選び方を学ばせます。
それぞれの仕組みや代表的な手法は、各語のページで扱います。
広く使われるようになった背景
機械学習は、データが無ければ学べません。また、学習では大量の計算を繰り返します。そのため、使えるデータの量と計算機の処理能力が、機械学習をどこまで実用にできるかを左右します。
インターネットや各種の機器を通じて記録されるデータが増え、大量の計算を現実的な時間でこなせる計算機が手に入るようになったことで、機械学習が扱える問題の範囲は広がりました。人が規則を書き尽くすことに限界があったルールベースの手法と比べて、データさえ集まれば精度を高められるという性質が、この変化とかみ合ったと言えます。
効果を発揮する場面と向かない場面
機械学習が力を発揮しやすいのは、判断の規則を人が書き出すのは難しいものの、判断の実例なら大量に集められる問題です。画像に写っているものの識別、迷惑メールの判定、過去の実績からの需要予測、普段と違う取引の検知などがこれに当たります。状況が変わっても、新しいデータで学び直すことで追従できる点も利点です。
反対に、次のような場面では機械学習が最善とは限りません。
- 学習に使える実例が少ない場合。モデルは訓練データに含まれる傾向しか学べません。
- 守るべき規則がはっきり決まっていて、その通りに処理すればよい場合。例えば、決められた計算式どおりに金額を出す処理は、規則をそのまま書くほうが確実です。
- 一つ一つの判断の理由を明確に説明しなければならない場合。
注意点もあります。訓練データに合わせすぎると、訓練データでは正解できても新しいデータでは誤りが増えます。この状態を過学習と呼びます。また、訓練データに偏りがあれば、モデルもその偏りを受け継ぎます。どのような情報を入力として与えるか、つまり特徴量の選び方も結果を大きく左右します。
人工知能やディープラーニングとの関係
人工知能(AI)は、人間の知的な振る舞いを計算機で実現しようとする研究や技術の総称です。機械学習は、その中で「データから学ぶ」ことによって知的な振る舞いを実現する方法のまとまりです。ルールベースの手法も人工知能に含まれますが、機械学習には含まれません。
ディープラーニングは機械学習の一つの方法で、人間の神経回路を手本にした数理モデルであるニューラルネットワークを多層に重ねて使います。多くの従来の機械学習では、どの特徴量を使うかを人が設計する必要がありました。ディープラーニングは、特徴量として何を取り出すかもデータから学べる点が大きな違いです。仕組みの詳細はディープラーニングのページで扱います。
試験で問われること
ITパスポート試験
- 教師あり学習と教師なし学習の基本的な違いを理解する。
- 機械学習が活用されている身近な例(翻訳、レコメンド)を知る。
- データが学習に不可欠であることを押さえる。
最終更新日: 2026/09/23