基本情報技術者試験
ぽあそんぶんぷ
ポアソン分布
Poisson Distribution
ポアソン分布は、決められた時間の区間の中で事象が起きる回数を表す離散型の確率分布です。区間内で事象が起きる平均の回数だけで分布の形が決まり、指数関数を使った式でちょうどその回数になる確率を計算できます。標準偏差は平均の回数の平方根になります。
詳しい説明
一定の時間内に事象が何回起こるかを表す分布
ポアソン分布は、決められた時間の区間の中で事象が何回起こるかをモデル化するために使われる確率分布です。米国国立標準技術研究所(NIST, National Institute of Standards and Technology)の統計ハンドブック『NIST/SEMATECH e-Handbook of Statistical Methods』は、ポアソン分布を一定の時間区間内に起こる事象の回数をモデル化するために使う分布と説明しています。
ここでいう事象とは、数えることのできる出来事のことです。たとえば「1分間に届くメールの件数」のように区間を決めて、その中で起きた回数を数えます。回数なので、とりうる値は0、1、2、3と続く0以上の整数だけです。ハンドブックも値の範囲を0から無限大までとしています。1.5回のような途中の値はとりません。このように飛び飛びの値だけをとる確率変数を離散型の確率変数と呼び、ポアソン分布は離散型の確率分布の一つです。
確率を求める式と各記号の意味
ハンドブックは、回数がちょうど になる確率を次の式で示しています。この式のように、離散型の確率変数が特定の値をとる確率を与える関数を確率質量関数と呼びます。
式に出てくる記号の意味は次のとおりです。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| 区間の中で事象が起きる回数で、0以上の整数 | |
| ラムダと読み、区間の中で事象が起きる平均の回数 | |
| 自然対数の底で、およそ2.718 | |
| の階乗で、1から までの整数をすべて掛けた値。 は1と決められている |
ハンドブックは を形状パラメータと呼び、区間の中での平均の事象数を示すものとしています。分布を決めるパラメータはこの の1つだけです。平均の回数さえ決まれば、0回、1回、2回と、各回数の確率がすべて式から計算できます。
平均2回の場合の確率を計算する
架空の例として、ある窓口に1分間に届くメールの件数が平均2件だとします。件数がポアソン分布に従うと仮定して、 を式に入れます。 はおよそ0.1353です。
ちょうど0件の確率は、、 なので となり、およそ0.1353です。
ちょうど3件の確率は次のように計算します。
同じように0件から6件までを計算すると、次の表になります。値は小数第5位を四捨五入しています。
| 1分間の件数 | 確率 | 0件から 件までの累積 |
|---|---|---|
| 0 | 0.1353 | 0.1353 |
| 1 | 0.2707 | 0.4060 |
| 2 | 0.2707 | 0.6767 |
| 3 | 0.1804 | 0.8571 |
| 4 | 0.0902 | 0.9473 |
| 5 | 0.0361 | 0.9834 |
| 6 | 0.0120 | 0.9955 |
表では、1件と2件の確率が同じ値で最も高く、どちらもおよそ27%です。ハンドブックは、 が整数のときは と の両方が最も起こりやすい値である最頻値になると述べています。 の表で1件と2件が並んだのはこのためです。
累積の列は、ハンドブックが示す累積分布関数 の値にあたります。4件以下に収まる確率はおよそ95%で、5件以上届く確率は からおよそ5%と読み取れます。
平均と標準偏差がλだけで決まる
ハンドブックは、ポアソン分布の平均が 、標準偏差が であると示しています。標準偏差は、値が平均からどれくらい散らばるかを表す量です。標準偏差 を2乗すると分散は になり、平均と同じ値になります。
メールの例では、平均は2件、標準偏差は でおよそ1.41件です。平均の回数を決めると、散らばりの大きさも同時に決まります。ポアソン分布では、平均と散らばりを別々に指定することはできません。
λの値を変えると分布の形が変わる
比較のため、1分間に平均0.5件しか届かない別の窓口を考えます。 は平均の回数なので、整数である必要はありません。
| 1分間の件数 | のときの確率 | のときの確率 |
|---|---|---|
| 0 | 0.6065 | 0.1353 |
| 1 | 0.3033 | 0.2707 |
| 2 | 0.0758 | 0.2707 |
| 3 | 0.0126 | 0.1804 |
| 4 | 0.0016 | 0.0902 |
では0件の確率がおよそ61%と最も高く、件数が増えるほど確率は急に小さくなります。ハンドブックは、 が整数でないときの最頻値は より小さい最大の整数であるとしており、 では0がそれにあたります。
が大きくなると、確率の高い回数は大きい側へ移り、標準偏差 も大きくなるので散らばりが広がります。ハンドブックは分布の左右の非対称さを表す歪度を としています。 では歪度がおよそ1.41、 ではおよそ0.71で、 が大きいほど左右の偏りは小さくなります。
観測したデータからλを見積もる
実際の場面では、 が最初から分かっているとは限りません。ハンドブックは、 の最尤推定量が標本平均であるとしています。最尤推定とは、手元のデータが最も起こりやすくなるようにパラメータの値を選ぶ方法です。
架空の例として、ある窓口で1分ごとに5回、メールの件数を数えたところ3件、1件、2件、0件、4件だったとします。合計10件を5で割った2件が、この窓口の の見積もりになります。
取り違えやすい点
- ポアソン分布は回数を数えるための分布です。値は0以上の整数だけをとり、長さや時間のような連続した値そのものを表す分布ではありません。
- は区間の長さと組になって意味を持ちます。「1分間に平均2件」と「1時間に平均2件」は別の であり、区間の決め方を変えれば の値も変わります。
- 標準偏差は ではなく です。 のとき、標準偏差は2ではなくおよそ1.41です。
- 式から求まるのは、データがポアソン分布に従うと仮定したときの確率です。実際のデータがこの分布に従うかどうかは、式だけでは分かりません。
このページで確かめていないこと
このページの根拠は、NISTの統計ハンドブックにあるポアソン分布の項目です。ハンドブックは一般の統計の参考書であり、この分布が機械学習のどの手法でどう使われるかは書かれていないため、このページでも書いていません。分布の名前の由来になった人物や、分布が考え出された経緯も、根拠にした範囲に記述が無いため書いていません。
試験で問われること
基本情報技術者試験
- 性能評価や待ち行列理論の計算基礎として理解する。
- 正規分布との用途の違いを意識する。
- システム負荷の見積もりにおける応用例を問う問題に対応する。
最終更新日: 2026/09/23