人工知能とは何か:定義と4つのレベル
天気アプリと生成AIを分ける境界線はどこにあるのかという問いから、人工知能とロボットの違い、決まった定義がない理由、自分で学ぶ度合いで4つのレベルに分ける見方を身近な例でつかみます。深掘り層では、各レベルの中身と、AI効果やエージェントという見方まで説明できるようになります。
ねらい
このレッスンでは、人工知能(じんこうちのう)とは何かを学びます。
基礎
人工知能とロボットの違い、定義が1つに定まらない理由、そして自分で学ぶ度合いで4つのレベルに分ける見方を身近な例でつかみます。
1. 人工知能はロボットの頭脳にあたる技術
スマートフォンの天気アプリは、明日の降水確率を教えてくれます。といっても、アプリが自分で天気を予測しているわけではありません。気象機関が計算した予報値を受け取り、画面に表示しているだけです。一方、同じスマートフォンで動く生成AIは、決まった答えのない雑談にも付き合い、こちらの言葉に合わせて返事を組み立てます。片方を「ただのプログラム」と感じさせ、もう片方に「知能らしきもの」を感じさせる境界線は、どこに引かれているのでしょうか。
この境界線の正体をたどることが、人工知能とは何かを知る道すじになります。手はじめに、人工知能という言葉が指す範囲をはっきりさせます。ロボットと人工知能は、指しているものが違います。
ロボットは、モーターやセンサーを使って物理的な身体を動かす技術です。腕や車輪といった、目に見えて動く部分を受け持ちます。これに対して人工知能は、ものを見分ける認識、状況に応じて決める判断、すじ道を立てて考える推論といった、目に見えない頭脳のはたらきを受け持つ技術です。一言でいえば、人工知能はロボットの頭脳にあたる技術です。
頭脳のはたらきだけを取り出せるので、人工知能に身体は必須ではありません。将棋の人工知能には物理的な身体がありませんが、盤面を読んで次の一手を選ぶという高度な思考を行います。いま挙げた生成AIも同じで、身体を持たないまま、言葉を組み立てる頭脳のはたらきだけを担っています。この考えるしくみそのものを研究する分野が、人工知能です。
ポイント
ロボットは身体を動かす技術で、人工知能は頭脳のはたらきを受け持つ技術です。ロボットの頭脳にあたる部分が人工知能だと考えると、区別できます。
2. 定義が1つに定まらない理由
人工知能という言葉はこれほど広く使われているのに、人工知能そのものには、研究者の間でも決まった定義がありません。
理由は、意外にも私たち人間の側にあります。人間自身が、知能とは何かを説明しきれていないのです。「人間のように知的な機械」という大枠では、多くの人の意見が一致します。しかし、その先で立場が分かれます。心のはたらきまで含めて、人間と同じように考える知能を丸ごと実現することを目指す立場もあれば、特定の課題を人間なみにこなせれば知能と呼んでよいと考える立場もあります。この2つの立場の違いは、機械に心は宿るのかという、知能をめぐる大きな問いにつながっていきます。
土台になる知能の理解が定まらないため、その人工版である人工知能の定義も、1つに絞れないのです。
3. 自分で学ぶ度合いで分ける4つのレベル
エアコンから生成AIまで、人工知能と呼ばれるものの見た目はばらばらです。これらを整理するために、よく使われる見方があります。機械が自分で学ぶ度合いに応じて、人工知能を4つのレベルに分ける見方です。後のレベルほど、人が決める部分が減り、機械がデータから学ぶ部分が増えます。
| レベル | 名前 | 自分で学ぶ度合い | 身近な例 |
|---|---|---|---|
| レベル1 | 単純な制御プログラム | 決めたとおりに動くだけ | エアコンの温度調整、洗濯機の水量調整 |
| レベル2 | 古典的な人工知能 | 人が用意した多くの場合分けで判断する | カーナビの経路探索、診断のしくみ |
| レベル3 | 機械学習 | 判断のルールをデータから自分で見つける | 迷惑メールの自動振り分け |
| レベル4 | ディープラーニング | 注目すべき特徴まで自分で見つける | 画像認識、文章を作る生成AI |
レベル4のディープラーニングは、深層学習とも呼ばれます。
天気アプリは、この表に入る手前にいます。よそで計算された予報値を表示するだけで、状況に応じた判断そのものをしていないからです。レベル1のエアコンでさえ、室温の変化を感じ取って動きを変えています。一方、雑談に付き合う生成AIは、レベル4に位置づけられます。冒頭で立てた境界線の問いを考えるうえで、この「自分で学ぶ度合いの階段」が1つのものさしになります。
機械学習は、判断のルールをデータから機械が自分で見つけ出す方法です。ディープラーニングは機械学習の一種で、注目すべき特徴まで自分で見つけ出します。ここでいう特徴とは、見分けるときの手がかりのことです。犬と猫の写真を見分けるなら、耳の形や鼻の長さがそれにあたります。この2つのしくみは、このあとの章の中心になります。ここでは、4つのレベルの並びと身近な例をつかんでください。
ポイント
後のレベルほど、人が決める部分が減り、機械がデータから学ぶ部分が増えます。機械学習とディープラーニングは、その中でも自分で学ぶ力が大きい段階です。
ここまでの要点
- ロボットは身体を動かす技術で、人工知能は認識や判断といった頭脳のはたらきを受け持つ技術です。
- 人工知能に決まった定義がないのは、人間自身が知能とは何かを説明しきれていないためです。
- 人工知能は、機械が自分で学ぶ度合いに応じて4つのレベルに分けて整理できます。
まずは全体像をつかめれば十分という人は、ここで区切って大丈夫です。「人工知能はロボットの頭脳にあたる技術で、自分で学ぶ度合いに階段がある」と押さえられていれば、この先の深掘りに進む土台はできています。
発展
ここからは、4つのレベルそれぞれの中身を具体例で確かめ、人工知能と呼ばれる範囲がなぜ動き続けるのかまで掘り下げます。
4. 4つのレベルそれぞれの中身
4つのレベルの違いは、人が決めていた仕事のどこまでを機械に渡すか、という一本の軸で見通せます。
- レベル1の単純な制御プログラムは、あらかじめ人が決めた動きをそのとおりに実行します。設定した温度を保つエアコンや、洗濯物の重さに合わせて水量を変える洗濯機が例です。ルールは一本道で、機械は決められたとおりに動くだけです。
- レベル2の古典的な人工知能は、人が用意したたくさんの場合分けを組み合わせ、状況に応じてふるまいを選びます。目的地までの経路を膨大な候補から探し出すカーナビが例です。ふるまいは複雑になりますが、判断のルールを書くのは、まだ人間の仕事です。
- レベル3の機械学習は、そのルールを書くという人間の仕事を機械に渡します。迷惑メールの自動振り分けでは、どんな言葉を含むメールが迷惑メールになりやすいかという判断のルールを過去の大量のメールから機械が自分で見つけ出します。人がルールを書き切れないほど複雑な問題にも、道が開けました。
- レベル4のディープラーニングは、さらに、どこに注目するかを決める仕事まで機械に渡します。機械学習では、データのどの特徴に注目するかは人間が選んでいました。ディープラーニングは、犬と猫を見分けるときに「耳の形に注目せよ」と人が教えなくても、大量の画像から注目すべき特徴そのものを見つけ出します。
レベルが上がるごとに、人が手で決める部分が減り、機械がデータから学ぶ部分が増える。この受け渡しの積み重ねが、4つのレベルを貫く軸です。
理解の確認
レベル3で機械に渡されたのは、判断のルールを見つける仕事です。レベル4で渡されたのは、注目すべき特徴を選ぶ仕事です。この2つの受け渡しを自分の言葉で言い直せるか、確かめてみてください。
5. 人工知能の範囲を動かし続けるAI効果
定義が定まらない理由は、知能の説明の難しさだけではありません。何を人工知能と呼ぶかそのものが、時代とともに動いてきました。
手書きの郵便番号を機械が自動で読み取る技術が生まれたとき、人々はそれを知的な機械の誕生と受け止めました。文字を読み取る仕事は、人間にしかできないと考えられていたからです。ところが、その技術が郵便局の仕分け機に当たり前に組み込まれ、日常の景色になった現在、郵便番号の読み取りを知能と呼ぶ人はいません。しくみが分かって身近になったとたん、「なんだ、決まった画像処理をしていただけか」と受け取り方が変わったのです。
しくみが分からないうちは知能と呼び、解明されて広まった瞬間に「ただの自動処理」と呼んで知能の枠の外へ追い出す。この現象をAI効果と呼びます。技術の側は何も変わっていないのに、人間の受け取り方が変わることで、人工知能と呼ばれる範囲がたえず動いていくのです。
今は知能らしさを感じさせる生成AIも、しくみが日常の景色になれば、いつか「ただのプログラム」の側へ受け取られ方が変わるのかもしれません。冒頭で立てた境界線は、固定された1本の線ではなく、人間の認知とともに動き続ける線です。人工知能の定義がいつまでも定まらない原因の1つは、人間の側のこの性質にあります。
6. 環境を知覚して行動するエージェントという見方
レベルの階段が人工知能を縦に整理する見方だとすれば、性質のばらばらな人工知能を横にひとまとめにする見方もあります。エージェントという見方です。
エージェントとは、周囲の環境を知覚し、それに応じて自ら行動する主体を指します。この見方に立つと、室温を感じ取って風量を変えるエアコンも、現在地を知覚して経路を示すカーナビも、こちらの言葉を受け取って返事を組み立てる生成AIも、環境を知覚して行動する主体という同じ枠組みの上に並べられます。レベルの違いをこえて人工知能を考えるための、共通の土台になる見方です。
理解度の確認
説明できる項目にチェックを入れましょう。すべて確認できたら、完了ボタンで記録します。
分からなかった点・気になった点
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