不動産の相続対策
評価額と時価の差を使う考え方を軸に、移転対策・課税価格対策・納税対策・遺産分割対策という4つの型を説明できるようになります。
ねらい
これまで学んだ評価の知識を使って、不動産を中心とする相続対策を学びます。このレッスンを終えると、対策を「移転・課税価格・納税・遺産分割」の4つの型に整理して、それぞれの代表的な手法を説明できるようになります。
ストーリー
財産の全体像がつかめた山田さんは、いよいよ対策を考えます。「相続税を減らしたい。でも納税のお金も要る。そして何より、家族がもめないようにしたい」。相続対策はこの3つ(節税・納税資金・分割)のバランスで、どれかひとつに偏ると失敗します。
土台となる考え方: 評価額と時価の差
前のレッスンで学んだとおり、不動産の相続税評価額は、通常の取引価額(時価)より低くなるのが一般的です。路線価は公示価格の8割水準で、貸家建付地や貸家はさらに減額され、小規模宅地等の特例も使えます。現金1億円は1億円のまま評価されますが、同じお金で買った賃貸不動産の評価は大きく下がります。
ポイント
この差が、不動産が相続対策に使われる理由です。
注意
一方で、不動産は分けにくく、換金にも時間がかかります。節税に効く性質と、分割・納税に困る性質が表裏一体である点を忘れないようにしましょう。
対策の4つの型
1. 移転による対策(生前に渡す)
- 暦年贈与の活用: 基礎控除110万円の範囲で計画的に贈与し、相続財産そのものを減らします。
- 贈与税の配偶者控除: 婚姻期間20年以上の配偶者へ、居住用不動産等を最高2,000万円まで非課税で移せます。
- 住宅取得等資金の贈与の特例: 子や孫の住宅取得資金の贈与には非課税の特例があります。
2. 課税価格対策(評価を下げる)
- 現金を不動産に換える(購入・建築)。
- 更地に賃貸住宅を建てて貸家建付地・貸家の評価減を使う。
- 小規模宅地等の評価減の特例(自宅330平方メートル・80%減など)を確実に使える形で遺産分割する。
- 定期借地権の設定などで土地の評価を下げる。
3. 納税対策(払うお金を用意する)
- 生命保険の活用: 死亡保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)を使いながら、現金で支払われる保険金を納税資金にあてます。
- 延納・物納: 一括で払えない場合の制度ですが、要件があり利子税も伴うため、あくまで補助的な手段です。
- 売却による資金化: 相続した財産を売る場合、相続税の申告期限の翌日から3年以内の譲渡には、納めた相続税の一部を取得費に加算できる特例があります(取得費加算の特例)。
4. 遺産分割対策(もめない形にする)
- 遺言書の作成: 分け方を明確にし、争いを防ぎます(遺留分への配慮も忘れずに)。
- 分割しやすい資産への組み替え: 1棟の不動産より、複数の資産や現金のほうが分けやすくなります。
- 代償分割の準備: 自宅を継ぐ相続人が他の相続人へ代償金を払えるよう、生命保険などで資金を準備します。
例題
次の記述が適切か、不適切かを考えてみましょう。
保有する現金で賃貸アパートを建築すると、一般に、現金のまま保有し続ける場合に比べて相続税の課税価格は増加する。
答え合わせ
不適切です。賃貸アパートを建てると、土地は貸家建付地、建物は貸家として評価され、建築に使った現金の額より評価額は低くなるのが一般的です。課税価格は増加ではなく減少する方向に働きます。ただし、空室リスクや分割のしにくさという引き換えもあり、節税だけで判断しない姿勢が大切です。
応用
対策の組み合わせを考えてみましょう。
山田さんの相続では、自宅を長男が継ぐ予定だが、次男に渡せる財産が少なく、もめる心配がある。どのような準備が考えられるか。
答え合わせ
代償分割の準備が代表的です。長男が自宅を取得する代わりに次男へ代償金を支払う形にし、その資金を山田さんが生命保険(受取人を長男にする)で準備しておけば、非課税枠を使いながら分割の原資を作れます。あわせて遺言書で分け方を明確にしておけば、遺産分割対策と納税資金対策を同時に進められます。節税・納税・分割の3つのバランスという、このレッスンの軸で考える練習です。
分からなかった点・気になった点
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この章の問題を解く
章のまとめへ- 相続人が受け取る死亡保険金の非課税限度額の選択解く
- 死亡保険金の納税資金対策としての活用に関する正誤判定解く
- 上場株式の相続税評価の選択解く
- 生命保険契約に関する権利の評価に関する正誤判定解く
- 特定居住用宅地等の減額割合の選択解く